宮古地域の文化芸術活動の状況

澤内 逸陽
1 震災以後の文化施設の状況
震災から2年過ぎましたが、市民が活動の成果を発表する主要な場である市民文化会館は未だ復旧の途についていません。この施設の流失は免れたものの、浸水が激しかったため、再開には時間がかかるようです。当初、平成26年に再開の予定と聞いていましたが、もっと遅くなるようです。
地域の公民館や地区センターなどの利用施設は、流失しなかった公民館1館が補修を終え利用再開しましたが、ほかの施設は復旧していません。これらの施設建設はまちづくり計画との関係があるため、相当の時間を要するものと思われます。このうち1施設は再建されず、廃止されることになっています。
利用施設の状況
施設の種類 | 施設数 | 被災施設数 (被災地区) | 復旧済 | 廃止施設 |
---|---|---|---|---|
地方公民館 | 18 | 4 | 1 | 0 |
地区センター | 10 | 3 | 0 | 1 |
計 | 28 | 7 | 1 | 1 |
地区によっては家屋の大方が流失したところもありますが、中心市街地は大きな浸水はあったものの、他の市町村に比べると比較的多く流失を免れました。公民館の中には市役所業務を行うため利用できないところもありましたが、教育委員会や芸文協加盟団体をはじめ民間団体は、被災しなかった総合体育館や公民館、民間会社のホールなどを利用して活動しています。芸文協の会員の有志が公民館1館と民間会社のホールにピアノを寄贈しました。これにより、市民だけでなく宮古市に支援活動で訪れたアーティストの皆さんにも利用いただいております。
2 行政の取り組み
震災があったとはいえ、宮古市は通常の年と変わりなく文化事業を実施しています。市民文化会館を使用できないため、総合体育館や学校の体育館など利用できる施設を最大限利用して事業を行っています。
通常の事業としては
(1)みやこ市民文化祭(宮古市芸術文化協会と共催)
総合体育館、学校体育館、公民館、幼稚園などを利用
(2)岩手芸術祭巡回美術展
公民館で開催
(3)岩手芸術祭巡回小・中学校美術展
公民館で開催
(4)学校団体鑑賞事業
1.男声合唱===11中学校(6会場)で開催
2.ストリングカルテット===26小学校(12会場)で開催
(5)一般鑑賞事業
1.忍たま乱太郎キャラクターショー===学校体育館で開催
2.劇団わらび座ミュージカル===学校体育館で開催
3.みやこ郷土芸能祭===学校体育館で開催
(6)震災復興支援関連事業
1.フェアリーバレエ===3会場(小学校7校)
2.東京ディズニーランド・アンバサダー東北小学校訪問===2会場(小学校5校)
3.一般事業
・映画特別試写会===学校体育館で開催
・アート・コミュニケーション展===図書館で開催
・みやこ寄席===学校体育館で開催
・舞台・演劇===総合体育館で開催
3 宮古市芸術文化協会の取り組み
芸文協加盟団体の中には、震災により活動に苦労している団体が多くありますが、全国から寄せられた物心両面にわたる支援のお陰で活動を続けています。例年開催している「みやこ市民文化祭」も震災前と同じように開催しています。60回目を迎えた平成24年度も利用できる会場で開催しました。この1年の事業は次のとおりです。
(1)みやこ市民文化祭
舞台部門、展示部門20分野
(2)合同出版祝賀会(第30回)
宮古市関係者が出版した書籍の著者を祝って、毎年、合同の祝賀会を開催しています。今年度は、句集、郷土史、絵本、方言辞典など8冊の本が対象となりましたが、昨年度と同様、震災を取り上げた書籍が4冊ありました。
(3)復興支援関係の事業
1.朗読劇「12の贈り物」
演劇団体が盛岡市の団体との共催で宮古市と盛岡市で公演。
2.弦楽と合唱のコンサート
岩手県芸術文化協会との共催で、県弦楽研究会と地元の合唱団体の合同コンサート。
3.公益社団法人日本芸能実演家団体協議会との共催で、田辺靖雄さんと九重佑三子さんにゲストとして出演していただき、地元のバンドとコンサートを開催。
4.文化会館復興支援コンサート
ピアノ協会が文化会館の早期開設を願ってコンサートを開催。
(4)加盟団体の活動
芸文協の各加盟団体も、会員に被災者を抱えながら従来の活動を取り戻しながら、地域や仮設住宅を訪問する活動を行っています。舞台部門団体の活動だけでなく、皐月の提供など、少しでも生活に潤いを取り戻せるような活動もしています。
4 みやこ映画生活協同組合の活動
被災した岩手の沿岸地区には、宮古市を除いて、どの市町村にも映画館がありません。宮古市には全国でただ一つの「映画生協」があります。この映画生協は生協スーパーの中にあり、「シネマリーン」という二つの小さな映画館を持っています。映画生協は、震災後の5月から沿岸地区の被災地を巡回して上映活動を行ってきました。北は野田村から南は陸前高田市までの8市町村を回り、3月現在、172回の上映活動を行ったということです。当初は学校や避難所で、仮設住宅ができてからはそこの集会所などで開催しました。上映方法も映画だけでなく、映画とお茶会、映画と落語会など工夫をしながら人々の交流の場を作るように心がけています。この活動で、笑ったり、泣いたり、大勢で同じような思いを共有することのできる時間と空間の大切さを知ったというのです。
上映はプロジェクター2台で行っていますが、移動が多いため機材の消耗が激しいとのことで、現在は資金支援を受けていますが来年度からの活動を心配しています。また、遠くに行くのですが、現地の様子がわからないことがあり、間をつなぐ人、コーディネイトする人がいればいいということでした。
映画生協だけでなく、これからの文化芸術の復興活動は、資金、物資とともに活動のキーになる人材の育成が大切なのだと思いました。
民間団体の活動など、もっと触れたいことがありましたが、紙数がつきましたので今回はこれをもって報告といたします。
