ご覧のページは、これまでのコンソーシアムのホームページを活用し、コンソーシアムの活動記録や資料等をアーカイブ化したものになります。

試される文化芸術のチカラ12 ~「東北でしあわせを考える」アートNPO

東北文化学園大学総合政策学部教授 東北大学特任教授(客員)
志賀野 桂一

アート・インクルージョンの旗と村上たかしさん(左)、集めた瓦礫の一部(右)


 アートによるソーシャル・インクルージョン(社会包摂)の事例を紹介してみよう。仙台にアート・インクルージョン*という財団法人が生まれました。
 この団体の使命として以下のことが書かれています。



~『アート・インクルージョン』とは生き方であり、一つの思想である。それはアートを通して全ての人を優しく包み込む社会を実現することである。世の中には未だ性別、年齢、国籍、障がいの有無など、様々なバリアがある。それら人がつくり出したバリアを取り払うため、広い意味での芸術文化活動を通した、芸術的才能の発掘・育成、発表の場の確保などによって社会的自立を支援し、社会参加を促し、個性を尊重した創造的で文化的な社会のためのシステムを構築していく。~



 アート・インクルージョンは障がいのあるなし、年齢、性別、国籍、アートの基礎知識やスキルなど関係なく誰もが自由に参加できるバリアフリーのアートプロジェクトです。様々なメディアを 融合させ地域に根ざし継続していくことを目指しています。昨年2012年12月4日に、一般財団法人になりました。現在は、仙台市中心部にファクトリーを設け、障がいのある方(知的障害、精神障害、高次脳機能障害など)を対象とした就労継続支援事業B型の事業所となっています。
 パフォーミングアーツ(音楽祭、紙芝居)やアートワークショップ、巨大紙相撲、落ち葉deワークショップ 、ビジュアルアーツ(ゲルカフェなど)、笑顔のアート展・ながまち写真展などプログラムは多彩です。
 障がいのある方が、アートとアートの仕事を通して自立できるように、年限を定めないで継続的なトレーニングを行っていきます。 自分の才能を確認し、磨きをかけ、自分の好きな道を追求することで、新たな意味と価値を手にしていくことを目指します。これを指導しているのが宮城教育大学教授の村上たかしさんです。【写真左上】
 村上さんは、3.11の震災後いち早く生活物資を届ける救援活動に着手、その後、ガレキを拾い集め震災の記憶を残そうとモノの収集を行っています【写真右上】。アーチストの前に一人の人間として行動し、その後は自分たちの得意分野のアートを使って活動を継続しています。


NPO法人理事長の白木福次郎さん 「ほっぷの森」のホールでアートNPOフォーラム


 もう一人、障がいを持つ人々の支援活動を長年手がけているのは、地元経営者の白木福次郎【写真左】さんです。2007年2月に有限責任事業組合(LLP)就労支援センターほっぷを立ち上げました。2008年1月に特定非営利活動法人ほっぷとして生まれ変わり、就労移行支援事業と就労継続支援事業A型(雇用型)の福祉サービス事業所として現在に至っています。
 障がいのある人が一般就労(就職)する機会(チャンス)があまりにも少ないことを痛感する企業経営者、大学名誉教授、臨床心理士、フリーのアナウンサー、コピーライター、福祉施設の役員など多くの方によって支えられ、ほっぷの森では、高次脳機能障害者と知的障害者のトレーニング(講座と職場体験)を2年間で就職のチャンスに挑戦して行く仕組みです。
 アートNPOフォーラムの全国大会が「震災とアート」を主題とし、このほっぷの森で開催されたことは、ある意味で象徴的なことでありました。アートの多様性と包摂機能を考えるとき今後被災地の人々と、障がいを持つ人々とをつなぎ連帯していかなければよい社会も真の復興も見えてこないと感じるフォーラムでした。


(C)写真撮影:志賀野


*アート・インクルージョンhttp://art-in.org/

コラムをまとめて読む場合は、下記からご覧ください。

関連コラム

ページトップへ