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平成27年度「いいたて村文化祭」実施報告と、今後の課題

飯舘村教育委員会
室井 麻矢

 トップ画像:中学生による田植え踊り


 「飯舘村文化復興元年」である平成24年度以降も、飯舘村では、年1回の村文化祭を継続して開催しています。全村避難により村での事業実施が困難なため、平成25年度以降は、村民が最も多く避難している福島市にある、飯坂町の「パルセいいざか」を会場として実施しています。


 平成27年度のいいたて村文化祭は、「までいの心をつなげよう」をテーマとし、10月31日・11月1日の2日間にわたり開催致しました。
 本年度は、村民が制作した文化作品を展示する「総合文化展」、同じく村民が日頃の文化活動の取り組みの成果や各地の伝統芸能を発表する「ステージ発表」、来場した子ども向けの「子どもひろば」、そして、地元商工会やサークル等による「飲食ブース」の4つで構成され、2日間でのべ1,100名の来場がありました。


                  総合文化展の様子


 本年度の文化祭の見どころとなったのは、土曜授業による村の子どもの参加と、外部団体との文化交流、村民による飲食ブース出店の3点です。
 初日は、村の幼稚園児50名と、土曜授業として文化祭に参加した小・中学生併せて約250名が、歌や踊りでステージを盛り上げました。中でも、中学生による地元伝統芸能「田植え踊り」の披露は、ステージを見ていた村民に大変喜ばれました。
 また、平成25年度から、近隣の市町村に村文化祭への出演・出展をお願いしています。本年度も、避難によりお世話になっている福島市の飯野町・飯坂町の皆様に、つるし雛の展示や伝統芸能の太鼓の披露をしていただき、村民が新しい文化・芸能に触れる機会となりました。
 さらに、村民による飲食ブースも充実し、有志による手打ち蕎麦や抹茶の振る舞い、加工食品の販売など、避難直後の平成24年度の文化祭ではできなかったことも実現しています。


                                                                                               中学生による田植え踊り                


 回を重ねるごとに内容が盛りだくさんになる村文化祭ですが、次年度からは会場を村に戻し、今年の夏に完成予定の新しい公民館にて、村文化祭を実施します。
  村での文化祭開催にあたり懸念されるのが、参加者の減少です。帰村宣言前の実施となるので、線量に対して不安の大きい、子どものいる世帯や若い世代の参加が少なくなることが予想されます。
また、会場が遠くなることから、これまで足を運んでいただいていた近隣の市町村の方々の来場も、少なくなるかもしれません。


 そこで、村文化祭を盛り上げるカギとなるのが、村の民俗芸能です。現在、村の各地域の芸能保存会のうち、避難後も継続して活動をしている団体は、全体の5分の1程度にとどまっています。避難により村民が散り散りとなってしまい、練習場所の確保が難しいこと、後継者が不足していることなど、様々な課題により継承が難しくなっているのが現状です。
 しかし、震災前は、地元の行事の折に芸能を披露したり、3年に1度、村の芸能発表会が開催されるなど、保存会の活動は活発でした。また、震災後、県内各地で村の芸能を披露する機会をいただき、村外の方からのお問い合わせが増えていることもあり、今まで以上に、村の文化振興になくてはならない存在となることは間違いありません。


                                赤坂の神楽                                            宮内の宝財踊り


 村の民俗芸能を活発にし、これからの時代につなげていくには、若い世代の力が必要不可欠です。しかし、避難中の今、民俗芸能に触れる機会がなく、興味を持ってもらうのが難しいのが現状です。その主な原因として、「内容が分からない上に、演劇時間が長く、飽きてしまう」という点があげられます。解決方法として、舞台横にスクリーンを設置し解説を入れたり、上映時間を縮めた縮尺版を用意し、発表の場に合わせて活用するという提案も出ています。実現には、それなりの人出と専門知識、そして何より、村民の皆さんの協力が不可欠ですが、少ない人数で通常業務と避難業務の両方を担う現在の村の体制では、容易に取り組むことができないのが現状です。


 課題は様々にありますが、村では、来年度の文化祭に、これら民俗芸能の発表の場を設けることで、現在活動が途絶えている芸能保存会が活動を再開するきっかけとなるのではと期待しています。必要な支援は何か、協議しながらよく検討し、実現に向けて取り組んでいきたいと思います。

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