レポート
「森のはこ舟フォーラム2015」報告
【第1部】
≪事業説明≫
ディレクター:伊藤 達矢 氏
≪「森のはこ舟アートプロジェクト2014」活動報告≫
聞き手:小林 めぐみ 氏
この事業は、福島県の自然豊かな森のめぐみを見つめ直し、森の姿を改めてよく知ろうということを地域の人々の手で行なっているプログラムである。そこにアーティストが加わることによって、アーティスト特有の思いがけない(よい意味で変な?)発想から融合性が生まれ、面白い展開につながっている。その事業の2014年度の事業報告が行われた。
事業のテーマは以下のとおりである。
「ふくしまには、豊かな森があります。 生命の重み、自然の恵み、生きるための知恵。
かつて私たちの先人たちは、森から多くを学んできました。
しかし、今、私たちは森を離れて遠く仰ぐようになりました。
東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故は、私たちが、これまでに失ってしまったことがいかに大きかったかを明らかにしました。
大きな犠牲と代償に代えて気づいたそのことへの答えを、大切に育てなければなりません。
だから今、私たちは森につどいましょう。
そして先人の知恵と知識を受け継ぐ森人たちに導かれ、もう一度森から学びたいのです。
そして、森に秘められた教えを読み解くのは、このプロジェクトに参加するアーティストたちとあなたです。
森の草木、森の祈り、森の暮らし、森のエネルギー、森の食。
森の懐に抱かれたそれらの宝物にそっと触れたい。
アーティストたちと森に学んだ後、森の宝物をあなた自身に活かして欲しいのです。
森人と アーティストと あなたと。
森に学んだことから、私たちの今を変えましょう。そして、未来を創りましょう。
森は、私たちを未来に運ぶ「はこ舟」なのです。」
この後、各エリアのコーディネーターからの事業について報告が行われた。
≪喜多方エリアの報告≫
登壇者:金親 丈史 氏 ・ 佐川 友美 氏
喜多方エリアの報告は、福島県の山脈と水路がわかる地図を基にした、喜多方市という「まちの顔」についての説明から
始まった。自然豊かな山々と蔵の町として栄える市街地で成り立つ喜多方市。
このエリアのプロジェクトのキーワードは「信頼づくり」という言葉が相応しい。
「平野と山間部の交流」や「アーティストとの信頼関係」。
「市街地の人々が森林文化に興味を抱くきっかけ作り、山間部の人々とも交流できること」がこのプロジェクトの目標だそうだ。
「市街地と集落の橋渡し」という言葉を遣ってこのエリアの活動を報告した若いコーディネーターからは、戸惑いや何度も大きな壁に当たったであろうことが発表の緊張感と共に手に取るように伝わった。
しかし、若い人にもこのような経験やチャンスが与えられていることは、兎角「即戦力」を求められがちな現代社会においては、非常に恵まれた、良い体制を作っているのだろうと感じた。
≪西会津町≫ 登壇者:蒲生 庄平 氏
西会津町は、「プログラムがもたらした効果」ということをテーマに報告を行った。
企画の当初は、「アートって何だ」という疑問からプログラムを考える過程で非常に迷いがあったらしい。
しかし、自然豊かな「空間」や町おこしに対する熱い想いを持った「人材」を改めて見つめ直すことにより、プロジェクトが整っていく様子が、よくわかる報告だった。
当初のテーマ「プログラムのもたらした効果」については、「人間が日常的に行ってきた、目の前にあるものを観察し考える、という行動を思い出させてくれた。」と締めくくっていた。
森と向き合い、森は地域にとって新たな可能性を見出すきっかけをくれたのだそうです。
西会津エリアには、今後、豊かな自然と豊富な人材の中で、今後はもっと広く大きく舟の柁を漕いで行ってほしいと感じた。
≪三島町≫ 登壇者:三澤 真也 氏
第一部の最後は、三島町より数あるプログラムの中から「食のはこ舟」について報告が行われた。
コーディネーターの三澤さんからは、昨年末「はこ舟に乗せた祈り」と題し、三島町でのプロジェクトの様子について、コラムをご執筆頂いた。
【コラムの詳細】http://bgfsc.jp/column/column-data/2885
その文章からも自然と人間が一体感をもった生活の様子やプロジェクトの様子がひしひしと伝わってくるが、今回もまた、地域にしっかりと根を張った彼の言葉が紙芝居の画像と共に「生きる力」そのものとして、こちら側に伝わってきた。
「地域の人がやりたいと思ったことをその背景も含めて、お手伝いすることで、既にアートの垣根を越えている」と彼は言っていたのだが、生活の中にかかわることによって生れる「わくわく感」や「ドキドキ感」は、生活そのものを豊かにし、アートそのものなのだろうと感じながら、「トチ餅」作製の報告を聞いた。
【第2部】
トークセッション「森で生きる人々」
実行委員会委員長 赤坂 憲雄 氏
モデレーター:川延 安直 氏
喜多方市・西会津町・三島町 各エリア登壇者
この「はこ舟」に様々な人を乗せていきたいという言葉からトークセッションが進行した。
自由な語りの中、印象的だったのが、赤坂実行委員長が語った以下の内容である。喜多方エリア登壇者の報告にあった「橋渡し」という言葉から、かつてバブルの時代、人々は「つながる」ために道路を建設し橋を架けた。しかし、その橋や道路は、若者達を都市へと流出させるモノとなり、高齢化が加速する原因となった。もう一度、地域を見直し、「デザイン」し直す必要があるといった内容だ。外部から地域に係わる際、良かれと思って行ったことが、本来の目的とずれてしまう怖さがあると感じた。
「森は人と一緒にあるものである」というテーマに沿った協力のあり方が必要なのだと改めて感じた。また、「森は人と一緒にあるもの」という登壇者からの発言の中で、お名前が出てきた喜多方エリアの楚々木集落のコウさん。最後の質疑応答の際に、「ありがとうございました、楚々木集落がなんだか明るくなった気がします。」と発言された際には、これがプログラムそのものなのだと感じ涙ぐみそうになった。
イベント名 | 森のはこ舟フォーラム2015 |
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開催期間 |
2015年05月16日(土) 【開場】15:15 【開演】15:45 |
エリア | 東北エリア(福島県) |
開催地 | 福島県 |
会場 | 福島県立博物館・講堂 (〒965-0807 福島県会津若松市城東町1-25) |
料金 |
無料 定員200名(申込み不要) |
問合せ先 | 森のはこ舟アートプロジェクト実行委員会事務局 TEL 090-5357-3381(遠藤) |
主催 |
福島県|森のはこ舟アートプロジェクト実行委員会 |
共催 |
東京都|アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団) |
協賛 |
日本たばこ産業株式会社|公益財団法人 福武財団|公益財団法人 朝日新聞文化財団|公益財団法人 野村財団 |
協力 |
文化芸術による復興推進コンソーシアム |