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レポート
唐桑の風土を五感で感じる ~「100年後のまつりの支度」に参加して~

イベントレポート
事務局ブログ

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【行程】
①八幡神社   イントロダクション      ⑧小鯖港    船にのる
②古舘家    岬の借景                     ⑨海      海水を汲む
③タルホシバ  白い石をひろう            ⑩鮪立港    陸を見る
④エビスダナ  白い石をひろう            ⑪漁火パーク  山に登る
⑤牡蠣磯    岬を越える                  ⑫早馬山山頂  儀礼
⑥ナヅケイワ  占う                           ⑬墓地     通り抜ける
⑦トンネル   くぐり抜ける               ⑭海岸     海にでる


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 唐桑の風土を感じ、昔の人の暮らしと脈々と続くまつりの意味を考える今回の企画。出演アーティストで、企画の先導者である斉藤道有さん、トチアキタイヨウさんのイントロダクションから始まった。
 このあたりの神社は、約1300年前に、紀州から鮪立港を伝い唐桑を仮宮として室根山に本宮が伝わったという史談があることから、彼らはこの企画の前に約2週間かけて、室根山から地域一帯をめぐり、調べ、発見と創作を重ねた。
 今回の企画は、その一片を一緒にたどりながら、見せてくれることにより、地域に文化が伝わる過程やこれからの道筋を自分なりに感じ、解釈するという趣旨だった。


 完成した作品を鑑賞する時とは、また違った作品の制作途中を垣間見るような感覚でスタートした。
 今回の企画で、鍵となるのが「早波舟(さっぱせん)」。
 この「早波舟」は、1月の御崎神社祭典で郷土玩具として、販売されるそうで、昔、オオシケに遭った漁船を1頭の鯨が御崎神社まで導き救ったことから、小型の模型船を作り献納したことが由来である。(唐桑町観光協会HP参照)
この「早波舟」を1名ないし2名で持ちながら、拠点となる先々で、地域に存在する様々な一片(例えば、白い石など)を舟に乗せていき、立寄る場所で、「早波舟」に乗せているモノを交換し、儀式のような、懐かしい遊びのような不思議な感覚で進んでいった。



                                                         中央の舟が早波舟


 午前中は、波打ち際や岸壁を土の感触や波の音、草の匂い、石の感触など確かめるように歩いた。
  当日は、雨だった為、夏のような強い日差しや海の向こうに広がる島々といった視覚から入る感覚は、届いてきにくかったけれど、そのぶん雨や風が、手足や耳、鼻を通じて、潮の匂いと共に子どもの頃に「探検ごっこ」をして遊んだ時のような、懐かしい感覚も運んで来てくれた気がした。



 皆で連なりながら、2つの岬を歩いた後は、お参りをし、鈴の音を聴きながら一人ひとりトンネルをくぐり抜けた。その後、漁船に乗り、海へ出た。波しぶきと雨風が顔に当たって、潮の味を口元に感じながら、午前中の行程を終えた。



 昼食の後は、アーティストの2人が2週間滞在した記録を見ながら、お話を伺った。この間は、「たどる」「みあう」ということも「キーワード」としながらの作業だったようで、舞いについて語られる際、「景色に身体を当てはめる」といった言葉が印象的だった。その後、私達は、早馬山へ向かった。



                    早馬山


 山頂に到着すると、これまで「早波舟」に乗せて来たモノを組み合わせてお供え、お参りをした後、お二人のアーティストの舞いを見た。「景色に身体を当てはめる」を視覚的に感じた瞬間だった。



                   早馬山にてお二人の舞


 下山をして、「早波船」を海に浮かべたところで、今回の企画は終了したが、最後に「100年後のまつりの支度」というタイトルをどのような思いから付けたのか聞いてみた。
 昔から「船舶仕込み」という船に乗るための支度を整える仕事が気仙沼にはあり、これは、何ヶ月後にどこの港に着くから、そこに向けて支度をすることもあるという。そうした地域、時間を越えた行為から、アートを通じて未来へ向けて送っておくこと「支度」が何であるかを考えたそうで、「100年後」というのは、人間の生命が約80年前後とするとその先へ継承していくこと、創造していくことという思いから付けられているそうだ。


 今回の企画で、残念だったことは、当日雨の影響もあり行程に思った以上に時間がかかってしまった関係で、企画終了後の参加した仲間たちとの「振り返り」の時間が共有できなかったことだ。参加した一人ひとりがどのように感じて何を発見したのか、是非とも聞いてみたかった。
 しかし、今回のこの企画は、始まりの「種」として、参加した一人ひとりが発見したことをのみこみながらこれから先に進んでゆくのであろう。
 三陸国際芸術祭そのものが、「ものさし」が違う様々な地域・世代・ジャンルの人々が、三陸とよばれる東北沿岸地域に入り、その違った尺度から今の暮らしがどんな形で生まれてきたのかをアートを通じて見つめ、考えている。今回の企画が、どのような「苗」となり、どのような「花」となって今後成長してゆくのか、今からとても楽しみだ。

イベント概要
イベント名 三陸国際芸術祭 2015 「100年後のまつりの支度」
開催期間 2015年08月29日(土)~2015年08月30日(日)
10:00~16:30
エリア 東北エリア(宮城県)
開催地 宮城県
会場 宮城県気仙沼市唐桑町野外会場 など
料金 有料
参加費3,000円(乗船第含む)
※募集人数12名(予約優先、先着順)
問合せ先 サンフェス事務局(みんなのしるし合同会社内) [TEL] 0192-47-5123 [Fax] 0192-47-5125 [MAIL] info@sanfes.com
主催 NPO 法人ジャパン・コンテンポラリーダンス・ネットワーク(JCDN)
共催 (公社)全日本郷土芸能協会|みんなのしるし合同会社
後援 岩手県|大槌町|大船渡市|住田町|住田町教育委員会|陸前高田市|大船渡市郷土芸能協会|(一社)大船渡青年会議所|IBC岩手放送|岩手朝日テレビ|岩手日報社|河北新報社|三陸新報社|テレビ岩手|東海新報社|めんこいテレビ|岩手県立大学|岩手大学
協賛 アサヒビール株式会社|株式会社リプロ
協力 トヨタ自動車株式会社|株式会社みずほフィナンシャルグループ|文化芸術による復興推進コンソーシアム|泉田家弐番蔵|FMねまらいん|カリスタ大船渡ベース|碁石海岸レストハウス|さんさんの会|(一社)三陸国際交流協会|Sumita音楽サークル「音蔵」|遠野まごころネット|来渡ハウス