ご覧のページは、これまでのコンソーシアムのホームページを活用し、コンソーシアムの活動記録や資料等をアーカイブ化したものになります。

レポート
「新しい東北」交流会 in 遠野

イベントレポート
事務局ブログ

 第2回、復興庁「新しい東北」ミーティング in 東京に続いて「新しい東北」交流会 in 遠野に参加しました。参加団体75団体、参加者130人が参集しました。
 東日本大震災の後方支援地区として活動した岩手県遠野市で開催されました。このたびは、『コミュニティの形成』をテーマとして、阪神・淡路大震災や新潟中越地震の被災地でコミュニティ形成に取り組んできた方々から被災地が抱える課題等が紹介されました。


 特別企画については、コンソーシアムからの提案が実現しました。「郷土芸能・祭りを通じたコミュニティ形成」を演題とし、被災地での郷土芸能・祭りからの地域コミュニティづくりが紹介されました。
 展示エリアでは16ヶ所のブースが設置され、コミュニティの形成に向けての活動を紹介していました。文化芸術による復興推進コンソーシアムも被災地での文化芸術を通じた復興活動を紹介し、特別企画の効果もあり、文化芸術活動にも興味を示してくれました。


                          ブース会場                     コンソーシアムのブース


 オープニングにあたり、岡本次官から遠野市長へ発災から後方支援基地として貢献したお礼がありました。東日本対震災から4年4ヶ月が経過しましたが、インフラ・堤防・住宅整備でだけでは、賑わいは戻りません。
 復興庁としてはターゲットが2つあります。「産業なりわい」づくりと「コミュニティの形成」、人のつながりで、皆さまと知恵を絞りながら進めたいと力強く語られました。その後、岩手県知事代理として、大友局長と本田遠野市長からも歓迎の挨拶がありました。


【ステージ企画】Step1


  「コミュニティの形成」をテーマとし、本多史郎氏(トヨタ財団プログラム・オフィサー)がファシリテーターを務め、復興過程でコミュニティをどう作るか、被災地が抱える課題は何か、阪神・淡路大震災(小林郁雄氏・人と防災未来センター上級研究員)と新潟県中越地震(阿部巧氏・中越防災安全機構ムラビト・デザインセンター長)の経験を踏まえ事例や課題が紹介されました。


    


 小林氏は、今の社会の流れが市民中心の方向で動いている。その中で、自分たちでマネジメントできるコンパクトなコミュニティ形成の必要性を唱えました。


 安部氏からは、復興過程での人間関係づくりや情報交流など真剣な取組が行われ、復興後は人が減ってはいるが、家族関係が強く残っており、ある種の活気の源になっていると、具体的な活動を紹介されました。


 本多氏からは復興公営住宅の現場から最も注意(切れ目が入る点)すべき3つのタイプとして①県営復興住宅(どの組織が復興住宅に対して責任をもつか)②山間型復興住宅(周囲との物理的な距離)③希薄型復興住宅(入所者の方々の人間関係)が紹介され、その解決策等の提案がありました。
 復興住宅のコミュニティ形成については、むずかしい状況にあるが、行政の各部局とNPOが連携し、入居者とコミュニケーションを図り、課題に対する答えを丹念に拾っていくことが大事であるとしました。


【特別企画】


 『郷土芸能・祭りを通じたコミュニティ形成』と題して、小岩秀太郎氏(全日本郷土芸能協会事務局次長)がインタビュアーとなって、東梅英夫氏(臼澤鹿子踊り保存会長)から郷土芸能活動を通した地域コミュニティの復興について伺いました。


  


 最初に小岩氏が東日本大震災における郷土芸能・祭りの全体的動向について説明。無形文化遺産ネットワークによる被災地の郷土芸能・祭りの調査報告がされました。
 震災直後の状況は、郷土芸能や祭りはそれぞれの地域のくらしから生まれ伝えられ、地域の振興には、芸能・祭りの復興が必要だとの声が次々上がりました。しかし、所在情報不足、ネットワークの不在、専門的な人材・組織・資金不足、政治と宗教の問題等、震災以前からの民俗文化の弱体化の課題がありました。


 その後、各郷土芸能団体が避難先で被災後の初演舞を行い、新しい鹿頭が寄付され、再開を後押しする様々支援が相次いで行われました。これをきっかけに急ピッチに衣装や用具を揃え、復活へと進展し、各地で郷土芸能の再興やかつてあった祭りと同じように踊り、練り歩くようになり、郷土芸能・祭りが地域コミュニティの再生に繋がりました。


 小岩氏がインタビュー形式で東梅氏に伺いました。
 『大槌町は太平洋に面している町であり、舟からの交易が盛んである。神社が二つあり、毎年大槌まつりが3日間行なわれ、20からなる郷土芸能団体が参加している。臼澤鹿子踊りは寛永時代(400年前)、千葉県房総から伝わった。
 昭和40年頃から、臼澤鹿子踊り保存会の熱いメンバーが集まり、独自で「鹿踊り伝承館」を建設(平成11年)し、稽古や会合の場として活用している。東日本大震災では、自然に避難所として利用され、地域の拠点施設となった。日頃の活動から良好な人間関係が生まれ、避難所対応は阿吽の呼吸で上手くいった。
 大槌には、鹿子踊りの団体が5団体あり、今後は連携して400年の郷土芸能を守り継承していきたい。また、「泥の木プロジェクト」を立ち上げ、衣装の髪の毛になる泥の木を植樹(2万本)している。これらの活動を契機に大槌鹿子踊り(4団体)の結成を目指し、広域的な活動も実現したい。
 郷土芸能・祭りを50年先まで継承するため、子どもたちに鹿子踊りを教えながら、地域の文化やふるさとへの思いを心に刻み込ませたい。郷土芸能や祭りを通した地域コミュニティ力の大切さと郷土愛を伝承していきたい。』と誇らしく語られました。


【交流タイム】Step2 


  イントロセッションや特別企画の論議を受けて、各ブースを回って名刺交換、情報交換しました。


【来場者との対話型セッション】Step3


 地域コミュニティの活動を行ってきた大船渡市、釜石市、亘理町、久慈市、郡山市から取組やイントロセッション、特別企画の感想、議論点が述べられました。また、交流タイムの間に来場者の皆さんから記入した意見を元に議論が行われました。


  


 本多氏⇒地域コミュニティの形成する上で課題を解決するために次の一手が必要ではないか。自分と違うカテゴリーを発想するしかない、やはり現場にいくと知恵が湧いてくる。


【来場者からのコメント】 
                                 
①郷土芸能や祭りからのコミュニティの活性化が必要だと感じた。                         
②行政とNPO、NGO等の協働体制での復興支援が大切である。


【来場者から質問】 
                                    
①復興公営住宅のコミュニティ形成に文化や祭りを活かすことが必要ではないか                  
 小岩氏⇒そこに郷土芸能がなくても、その地域にある森や神社などの資源を活用して、住宅の人々が集い新たな芸能や祭り、イベントを創造しながらコミュニティの形成はできると思う。また、シャッフルされた状況は地域や血縁が切り離されるが、NPOなどの中間支援組織が関わることによって、若い人たちが、その地域を知りたがることから、その力を活用して、新しい視点で祭り、芸能を創れると思われる。


②県営復興住宅の建設後、だれがケアするのか                         
 二宮氏⇒行政は困っている人々が目の前にいるのに、決まりに拘って堅い対応しているが、もう少し柔らかくてもいいのではないか。住民は設置者との会議では、普段のように意見を言えない状況にあるので、行政へ市民の声をしっかり届けることが我々の使命ではないかと思う。  


③長岡市山古志は明るくエネルギーを感じる。その要因はなにか                
 阿部氏⇒むずかしい。たぶん雰囲気だと思う。様々なことにチャレンジしているが、楽しみながらやっていることが大きい。また、他地域から村に訪れる方がいることも住民の明るさに繋がっていると思う。(本多氏⇒長岡市は若者の使い方が上手く、中間支援活動が活発に行われている)


④いつまで被災者として対応すべきか                            
 小林氏⇒被災者が被災者だと思っているうちはしょうがないが、阪神・淡路では10年までだったと思う。どこまでやるかは、支援している人の心もちしかない。政治的にお金を使うのであれは、グラフを見ればよいが。ある説では、仮設住宅と復興住宅の戸数がクロスした点で終わりではないかと言われている。はっきりとした指標を作った方が良いのではないか。


⑤被災者への復興支援の公平性はどうか                           
 伏木氏⇒公営住宅に対して話が上がる。防災集団移転はどうするか、どう線引きをするかがむずかしいが、まずは必要性として復興公営住宅が優先と考えている。コミュニティ形成については、地域包括支援の中で考え、今後の状況を踏まえながら検討していく。


⑥食は祭りの場ではどうですか                               
 本多氏⇒祭りのような晴れの場よりも日常生活での食が大事である。最近の食事購入は、コンビニのパターンが多く、コンビニ依存しない別のやり方を示し、経済面の負担や栄養の偏りが無い方策が大切だと考える。


⑦災害からのコミュニティの形成の問題について他の事例はないか               
 UR(都市再生機構)⇒ URと言えば団地ですが、首都圏の大規模団地でも高齢化が進み孤立者が多い。どうか良い最後を迎えられるようにと考えており、被災地と同じような現状がある。                              
 小林氏⇒ニューオリンズを参考にしたらどうか。基本的に病院や学校、店等が整備されていない所に住宅(人は住まない)が建たないように、住宅が無いところに店舗ができない。ニューオリンズは、住宅地の回りに、学校、コンビニなどの整備をしながら、おもしろいまちづくりを進めている。ぜひ、参考にして欲しい。
 本多氏⇒次の一手を考えるために、この度の交流会が情報のリソースになって頂ければと思います。


 このたびの「新しい東北」交流会 in 遠野は「コミュニティの形成」がテーマであり、コンソーシアムにとっても意義ある会議でした。郷土芸能や祭りが地域コミュニティ形成に重要な役割を果してきた実状を来場者や復興庁関係者に知って頂く絶好の機会となりました。また、復興住宅でのコミュニティの形成に新たな課題(孤立しがちな居住者)が浮かび上がっており、解決策として、文化芸術の力を活用したコミュニティ形成づくりが必要だと思いました。今後も被災地に伺って、現状・課題を把握しながら対応していくことが大切だと感じました。

イベント概要
イベント名 「新しい東北」交流会 in 遠野
開催期間 2015年07月26日(日)
13:30~18:00(開場13:00)
エリア 東北エリア(岩手県)
開催地 岩手県
会場 あえりあ遠野 2階 交流ホール(岩手県遠野市新町1-10)
料金 無料
本交流会への参加をご希望の場合、事前に事務局(下記アドレス)までメールにてご連絡ください。
問合せ先 「新しい東北」官民連携推進協議会事務局(みずほ総合研究所)E-mail:nt-info@mizuho-ri.co.jp TEL:03-3591-8773 (平日9:30~17:30)
主催 「新しい東北」官民連携推進協議会(事務局:復興庁)