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レポート
三陸国際芸術祭2015 メインプログラム『人と自然の生命を祝う-リズムと仮面が繋ぐアジア』

イベントレポート
事務局ブログ

【メインプログラム】人と自然の生命を祝う-リズムと仮面が繋ぐアジア 


 松林を抜けると、眼下には太古からの地層が織りなす巨岩が海岸線を描き出し、白い飛沫と轟音を生み出し、消えていく。リアス海岸の三陸復興国立公園に、伝統と現代、東北とアジアが生み出したリズムや仮面、身体表現が打ち寄せます。海が繋ぐ、交流と理解のためのプログラムも充実させました。


■9月21日(月・祝)


 三陸国際芸術祭2015メインプログラム夜の部から鑑賞しました。今年の碁石海岸会場は特設平台ステージをバックに2本の桜をメインに松林と海を舞台美術にしつらえ、自然界と融合した素敵な舞台が仕込んでありました。


                       特設平舞台                日没前の会場


 夕日が沈むと日本、インドネシア、カンボジアが生み出した切れのよいリズム、踊る仮面、ダイナミックな身体表現が碁石海岸に打ち寄せました。


①コミュニタス・アル・ハヤ(インドネシア)
 2004年のスマトラ島沖地震と大津波によって、地形が激変するほどの甚大な被害を受けたバンダ・アチェ地域には、ダンスを用いた郷土芸能が豊富にあります。Rapa-i Gelengは、震災以降、市民の心のよりどころとなった芸能の一つです。被災するまで興味を示さなかった多くの若者たちが、この芸能に取り組み、被災地を明るくしています。


  


②仙台ダンスクリエイション「UZU」
 「コンテンポラリーダンスって何だろう?」言葉で説明するよりも、まずは出会って、感じてもらいましょう。今回のメインプログラムのために、仙台にて出演者を募り、稽古を重ねてダンス作品を作りました。


 


「UZU」
振付/村本すみれ(東京)
 振付家・ダンサー。カンパニー「MOKK」、「studioRADA」代表。劇場に限らず野外・特殊空間での作品創作を得意とする。2013年JCDN主催「踊に行くぜ!セカンド」にて仙台レジデンスアーティスト。以来、仙台にて定期的にワークショップを行っている。
アシスタント・出演/郡満希
出演/大平啓太、小島祐美子、菅野光子、金子愛帆(MOKK)、木村まゆみ、櫻井祐子、八嶋稚英子


③アムリタ・パフォーミング・アーツ(カンボジア)
 伝統的なパフォーミング・アーツの復興保存と同時に、若いアーティストの育成、コンテンポラリー・ダンスや現代演劇の振興にも努めています。地元ダンサーを擁するプロダクション会社としても活動しており、企画制作、レジデンシー、国際コラボレーションなどプロジェクトは多岐に渡っています。


 


④金津流獅子躍大群舞(奥州市・大船渡市・花巻市・大崎市・横浜市)
 金津流獅子躍は岩手県南から宮城県北に広く伝わる、鹿角をつけ背中にササラという依代(よりしろ)を背負い、腰にさげた太鼓を叩きながら踊る鹿踊の一流派です。今回は9団体が一堂に会し、荘厳華麗な群舞を披露しました。


 


【感想】
 碁石海岸キャンプ場特設ステージは、夕やみが迫り聴衆が見守る中、三陸とアジアの郷土芸能が渾身の力をふりしぼり、神に仏に祈り捧げるように謡い舞う姿に酔い痴れ、時を忘れてしまいました。
 昨年初めて金津流獅子躍大群舞を観て、度胆を抜かれましたが、やはり圧巻。震災の供養塔と灯籠を前に、47人が集結し、群舞を披露。迫力ある太鼓と勇壮な演舞に観客は胸を熱くし、会場は鎮魂の祈りに包まれました。
 メインプログラム第1日が終了後、出演者とスタッフとの交流会が立食で行われました。コミュニタス・アル・ハヤ(インドネシア)の皆さんは性格が明るく、イケメン揃い。互いに自己紹介や記念写真を撮り合いました。また、アムリタ・パフォーミング・アーツ(カンボジア)の皆さんとは、手拍子に合わせてインドネシアの“まつりうた”を合唱して意気投合、テーブルを囲み踊りが始まり、ダンスで親睦が深まりました。音楽、郷土芸能、ダンスには国境がなく、文化を通して心がふれあいひとつになれるのです。


 


 


■9月22日(火・祝)


 大船渡市は快晴。三陸国際芸術祭2015メインプログラム2日目、天候に恵まれ、最高のイベント日和となりました。会場入りすると前川ディレクターと小岩コーディネーターとで綿密な打ち合わせが行われていました。


                大船渡湾からご来光               小岩コーディネーターと前川ディレクター


 2日目も、「人と自然の生命を祝うーリズムと仮面が繋ぐアジア」。昨日に続きリズムや仮面、身体表現の競演が行われました。碁石海岸の美しい自然をフィールドとして東北、アジアの生命の第二ステージの幕が開きました。


①サンド・パイパース・オーケストラ(大船渡市) 
 大船渡市を拠点に活動するビックバンドで、40年近い歴史を誇ります。メンバー3人の家族が流され、メンバーも被害を受けましたが、練習場は奇跡的に残り、被災2ヵ月後に活動を再開しました。


  


②コミュニタス・アル・ハヤ(インドネシア)
 2004年のスマトラ島沖地震と大津波によって、地形が激変するほどの甚大な被害を受けたバンダ・アチェ地域には、ダンスを用いた郷土芸能が豊富にあります。Rapa-i Gelengは、震災以降、市民の心のよりどころとなった芸能の一つです。被災するまで興味を示さなかった多くの若者がこの芸能に取り組み、被災地を明るくしています。


 


③100年後のまつりの支度の報告
 「昔の人の暮らしと、昔から続けられてきたまつりの意味を考える。今の人が何を思ってどんな風に暮らしてしているのか、そこから未来のまつりを考えるとしている。」 気仙沼市唐桑を(8月29日、30日)フィールドにツアーを企画した斉藤道有氏(美術家)とトチアキタイヨウ氏(演出家・ダンサー・俳優)が目的や思いを語ってくれました。


            北本ディレクターがインタビュー役              唐桑視察を身体感覚で表現(8/30)


④岩手県立北上翔南高等学校鬼剣舞部(北上市)
 鬼剣舞の伝承活動を国指定重要無形民俗文化財「岩崎鬼剣舞」から指導して貰い、94名の部員で部活として取り組んでいます。日頃は、老人福祉施設の慰問・各種イベント・国際交流事業などで公演をしており、大人顔負けの鬼剣舞でした。鬼剣舞部は、全国高等学校総合文化祭郷土芸能部門で何度も優秀な成績をおさめ、2012年(平成24年)、富山県で行なわれた第36回大会では、文部科学大臣賞・最優秀賞を受賞し、日本一に輝いています。


                    日本一の鬼剣舞              回転する鬼剣舞は拍手喝采


⑤板用肩怒剣舞(大船渡市)
  1752年板用の剣舞として永年伝承保存するよう申し伝えて、稲子沢家より分家させたと伝わっています。壇の浦に亡んだ平家の武将達とその一族が、経文と高僧の法力に依り、次々と浄仏していく様を舞踊化した舞です。


 


≪昼食休憩≫ 12:00~13:10
 昼食は、昨年同様碁石海岸が見渡せる食堂へ。昨年は数人のお客さんでしたが、今年は大入り満員といった地域経済波及効果が生まれていました。


 特設会場からアムリタ・パフォーミング・アーツ(カンボジア)が踊り、唄いながら練り歩き、芝生が広がり松林が連なるフィールドへと聴衆を誘導しました。お祭りでいう神輿や踊囃子舞台です。ワークショップで製作した仮面を付けたダンサーが回遊しながら芝生舞台へと誘います。そこで多彩な創作ダンス(自然・仮面・ダンス・音楽が融合)を披露するといった新たなダンス形態を表現しました。


           アムリタ・パフォーミング・アーツ               リヤカーで移動する下座


⑥コミュニティダンス「息吹のカーニバル」
  午後からは、舞台を碁石海岸の芝のフィールドを活用し、「誰もがダンスを創り、踊ることができる」という考えから、アーティストが関わり、地域の方々と共に創るコミュニティダンスを創出しました。ワークッショップで製作した仮面を活用し、自然・仮面・音楽・ダンスを見事に融合させた新たなダンスを表現しました。


              仮面ダンサー舞台案内人                 かたつむり(障害施設)の皆さんのパフォーマンス


                             仮面ダンス                仮面盆踊り(老人クラブ)


⑦臼澤鹿子踊り
 会場をメインステージに戻し、仮面がリズムに乗って躍動しました。天明年間、房州踊りに出会った村人が習い覚えたのが、現在の鹿子踊りと言われています。集落全戸が保存会に加わり盛り上げ、「どろの木」を薄く削った「カンナガラ」をまとい、荒々しく激しい演舞が特徴です。


 


 ⑧アムリタ・パフォーミング・アーツ(カンボジア)


 


 ⑨コミュニタス・アル・ハヤ(インドネシア)


   


⑩終演の挨拶 前川ディレクター
 「大船渡へ移住して4年、末崎町、碁石地区、大船渡の皆さんから協力して頂きありがとうございました。これまで、愚図ついた天気でしたが2日間とも晴れ、ピーカンとなってラッキーでした。特にコミュニティダンスは、地域の皆さんから参加して貰い、素晴らしい創作ダンスを創出したこと、そして、出演していただいた各団体が熱い思いで演舞した姿に感動しました。これにて、人と自然と生命を祝う-リズムと仮面が繋ぐアジアを終演します。ありがとうございました。」


               前川ディレクター終演の挨拶              雲ひとつないピーカンの海岸


【感想】
 雲ひとつない絶好の天気に恵まれた三陸国際芸術祭メインプログラムは、夕日が沈むと共に幕が下りました。昨年と比べると知名度が上がり、首都圏から大勢の来場者があり、地元の飲食店が満員になるなど経済波及効果も齎したと思います。
 舞台についても、テーマ『人と自然の生命を祝う-リズムと仮面が繋ぐ』をマッチングさせ、2本の桜と松林を生かした舞台美術の奥には、海と空をホリゾント幕としたしつらえがあり、郷土芸能の演舞を盛り立てる見事な演出となりました。
 コミュニティダンス「息吹のカーニバル」では、まつりの練り歩きともいえる手法を取り入れ、ワークショップで製作した仮面が移動舞台への誘い役となって、自然・仮面・ダンス・音楽を巧みに融合させた優れた創作ダンスとなりました。
 また、老人クラブ女性部や地域コミュニティ、障がい者の方々が参加したことにより、制作過程を通して親睦が深まり、被災地域との繋がりが生まれたことは大きな成果といえます。
 地方では、“顔が見える、知っている”関係があたりまえです。このプログラムは、大船渡市へ移住したスタッフがコーディネーター役となって、アーティストと地域を結び、形だけではない、心と心のふれあう中から近所、家族的な間柄が生まれています。地域コミュニティの形成が強化され、地域と“よそ者”(移住ディレクター)が地域を核とした新たな文化、まちづくりを生み出すといった地域創生のお手本といえる取り組みが進んでいます。

イベント概要
イベント名 三陸国際芸術祭2015 メインプログラム『人と自然の生命を祝う-リズムと仮面が繋ぐアジア』
開催期間 2015年09月21日(月)~2015年09月22日(火)
エリア 東北エリア(岩手県)
開催地 岩手県
会場 碁石海岸キャンプ場(岩手県大船渡市末崎町字大浜221‐68)
料金 無料
問合せ先 サンフェス事務局(みんなのしるし合同会社内) [TEL] 0192-47-5123 [Fax] 0192-47-5125 [MAIL] info@sanfes.com
主催 NPO 法人ジャパン・コンテンポラリーダンス・ネットワーク(JCDN)
共催 (公社)全日本郷土芸能協会|みんなのしるし合同会社
後援 岩手県|大槌町|大船渡市|住田町|住田町教育委員会|陸前高田市|大船渡市郷土芸能協会|(一社)大船渡青年会議所|IBC岩手放送|岩手朝日テレビ|岩手日報社|河北新報社|三陸新報社|テレビ岩手|東海新報社|めんこいテレビ|岩手県立大学|岩手大学
協賛 アサヒビール株式会社|株式会社リプロ
協力 トヨタ自動車株式会社|株式会社みずほフィナンシャルグループ|文化芸術による復興推進コンソーシアム|泉田家弐番蔵|FMねまらいん|カリスタ大船渡ベース|碁石海岸レストハウス|さんさんの会|(一社)三陸国際交流協会|Sumita音楽サークル「音蔵」|遠野まごころネット|来渡ハウス