レポート
『新しい東北』フォーラム in 仙台 ― 東北で進む「新たな挑戦」―


復興庁「新しい東北」交流会 in 遠野に続いて、「新しい東北」フォーラム in 仙台に参加。約400人が集いました。
東北では、震災復興に向けて、多彩な主体(若者、女性、企業、NPO、自治体等)が連携し、「コミュニティの形成」や「産業・生業の再生」など様々な分野で、震災前には見られなかった「新たな挑戦」が始まっています。
オープンスクエア―では、フォーラムを開催。「新たな挑戦」に取り組んでいる皆様をお迎えし、リレートーク形式で「取組の背景」や「込める想い」が披露され、コンソーシアムが紹介した八戸ポータルミュージアム「はっち」の活動も紹介されました。
また、「新しい東北」復興ビジネスコンテスト2015の表彰式も行われ、被災地産業復興につながる「新たな取り組み」の数々が紹介されました。
7Fスタジオシアターでは、「天に栄える村」、「木町の3.11‐ふるさとへの想い」の映画の上映と「東北ライター塾」、Creative Summer Camp「CM試写会・ジモト面白さ発掘術クロストーク」なども行われました。
①「新しい東北」復興ビジネスコンテスト2015表彰式
ビジネス部門の大賞(1社)・優秀賞(7社)企業賞(9社)の表彰式とアイディア部門の受賞者の表彰式と紹介が行われました。
ビジネス部門は被災地で新たな事業に取り組んでいる方や、被災により中断した事業を再開・復興した取り組み、アイディア部門では被災地事業者が課題解決案を募集し、(株)バンザイファクトリー(岩手県陸前高田市)「三陸の未利用資源を使用した健康配慮型『三陸甘露煮』」が大賞を受賞しました。
開会の挨拶 大賞・優秀賞表彰式
②「新たな挑戦」リレートーク
震災復興に向けて、コミュニティビジネスの形成や産業・生産の再生など、幅広い分野で「新たな挑戦」に取り組まれている多様な主体(若者、女性、企業、NPO、自治体等)の皆さまが、取り組みの背景や、そこに込める想いを、リレー形式で伝えました。
【聞き手進行役】青柳光昌氏(公益財団法人日本財団ソーシャルイノベーション本部上席リーダー)
≪特別講演≫ 大山健太郎氏(アイリスオーヤマ株式会社 代表取締役社長)
「東北の強みを生かす経営」と題して、震災から失われた商圏を取り戻すために、視点を変え“ピンチをチャンス”と考え、新たなビジネスプランを生み出しました。被災地を活性化させるため「東北未来創造イニシアチブ」を設立し、産業界・経済界が支援活動を進め、人材派遣や新しいビジネス支援が行われています。また、被災エリアが自立するには、特徴、特色が必要であり、これからは地域が連携し、異業種企業が協調しあい、地域の強みを活かしたビジネスを成立させるのがポイントであり、農業と二次産業などが連携し、消費者にとって「かんたん、べんり、おいしい」といった商品開発がキーワードとなると力説されました。
≪リレートーク第1部≫
①黒澤惟人氏(NPO法人wiz 理事/coo)
「若者のU・Iターンを促すインターシップの展開」
長期実践型インターシップ(1ヵ月滞在)のプロジェクトを実施して、地元経営者と学生とのマッチングからのU・Iターンを促している。
②今長谷浩氏(東北協同乳業株式会社 代表取締役)優秀賞・企業賞
「ヨーグルトで福島を元気にしよう!」
震災により甚大な被害を受け、放射能の風評被害を受けながらも、東京大学薬学部と共同で、自然免疫活性化能力の高い乳酸菌ヨーグルト(通常の2~3倍)を開発し成功した。
③中川雅美氏(福島県浪江町役場 復興推進課・広報)
「だれも住んでいない町の広報とは」
全町避難で誰も住んでいない自治体。人と町とを別々に考えざるを得ないという状況の中で、誰に向かって、何をどう、何のために伝えるか、試行錯誤しながらパブリックリレーションを進めている。
④高橋和良氏(株式会社バンザイファクトリー代表取締役)大賞
「ベンチャー企業の研究開発」
多難な人生を送る中、陸前高田に自宅と工場を建設(仮設住宅の人達の働く場づくり)し、ベンチャー企業に挑戦。風車・星形パスタ・冷麺・木工品(手型・おちょこ・アイホンケース)を生産、更には、健康食品として「砂糖・塩・醤油」を使わない「甘露煮」を開発した。年間通して働ける(正社員雇用増)ベンチャー企業を目指している。
三陸甘露煮の開発
⑤佐藤正実氏(NPO法人20世紀アーカイブ仙台 副理事長)
「昭和の写真をもとにオモイデを掘り起こし、地元の人々と作る『3.11オモイデツアー』の試み」
震災前の写真を活用してオモイデツアーを始めて3年目。現在は、現地の人々から参画して貰って企画運営を行い、滞在型のツアーとして、交流を深めながら町の痕跡や営みを体感する取り組みに挑戦している。更にオプションを増やし魅力のあるツアー展開を模索している。
オモイデツアーの様子
≪リレートーク第2部≫
①岩佐彩音さん(宮城県立多賀城高等学校2年)
佐藤千咲さん(宮城県立多賀城高等学校1年)
「多賀城高校が取り組む防災・減災教育」
多賀城高等学校周辺は津波で甚大な被害を受け、108人が帰宅困難になり、108人が宿泊した。震災学習として通学防災マップ、津波標識設置、防災ワークショップを行い、多賀城市内の各自治体に活動趣旨を説明し理解を得た。また、津波波高跡の消失が進む中、地域からの要望を受け、新たな設置、表示張替し、津波標識を巡る「まちあるき」を実施した。更に震災の様子を全国、世界に伝える運動も進め、国連防災世界会議に参加、平成28年度には災害科学科が開設される。
②山元崇央氏(一般社団法人ピースボート災害ボランティアセンター)
「7日からできる漁村留学~新しいボランティアのかたち~」
震災後にボランティアセンターを立ち上げ、支援物資の配布、炊き出し、泥かきから始め、2012年6月からはボランティアセンターをベースに、被災へのボランティアマネジメント(1万2千人)を実施した。その後、ボランティア減からの交流人口を拡大するための「漁村留学ボランティア」を仕掛け、被災者、支援者から個人と個人の関係が生まれ、移住、定住に繋がっている。
漁村ボランティアの紹介
③岩手佳代子氏(株式会社フカコラ美人 代表取締役)
「気仙沼の幸せを振舞う『ゑびす振舞い』プロジェクト」 企業賞
震災後、気仙沼に(株)フカコラ美人を設立して、サメから抽出したフカコラーゲンを用いた、美容健康商品を開発、販売をスタートした。2015年1月に小規模事業者連携、地域産業ブランディング事業として、「気仙沼の幸を振舞う・ゑびす振舞」を立ち上げ、「少量・簡単・小分け」といった消費者目線の気仙沼商品として人気を博している。
④佐々木結子(八戸市まちづくり文化スポーツ観光部/八戸ポータルミュージアム館長)
「八戸及び北東北震災復興における『はっち』の役割について」
はっちは、文化観光交流施設として2011年2月11日、震災1ヵ月前にオープンした。衰退する中心街に起死回生の起爆剤となるよう、まちづくり、文化芸術、観光、ものづくり、子育て等の複合施設である。発災時は避難所として、その後、自粛ムードを打破するために、復興支援事業として組み換え、アートの持つ力を活かした「心の復興」事業を展開した。
ゑびす振舞の紹介 はっちの活動紹介
⑤岡本俊太郎氏(my japanファウンダー)
「Creative Summer Camp ~地域の魅力を若手クリエーターが30秒動画で表現する~」
クリエイティブ・サマー・キャンプは、全国から集結した若手映像クリエイターが新たな東北の売り出し方を制作表現する、合宿型映像制作プログラムを展開している。「石巻と食」「会津と陶器」「赤湯と温泉」をテーマに制作された画像を見ながらプロセスを紹介した。(詳しくは≪Creative summer camp 「CM試写会・ジモト面白さ発掘術クロストーク」を参照)
30秒CM紹介
≪1Fオープンスクエアロビー≫
ロビーでは、復興ビジネスコンテスト受賞者の活動紹介パネルの展示と「新しい東北」官民共同PR事業として行われた、東北を代表するお土産を発掘するコンテスト「世界にも通用する究極のお土産‐新しい東北の挑戦」の作品が展示されていました。
受賞者紹介パネル 究極のお土産展示
≪東北ライター塾≫
7Fスタジオシアターにおいて、ニュースサイト「しらべぇ」の編集長であるタカハシ マコト氏を講師に迎え、「情報発信力で東北は変わる」というテーマで講演がありました。また、小予算で「東北の眠れる商品を、どう全国へ売り込むか」を考える、発信力強化セミナーが開催されました。「ジモトのあたり前」を魅せ方と伝え方の工夫で発信すれば、「売れる」「儲かる」「支持される」へと繋がるのか。東北の「眠れるお土産」を題材に、どうのように全国に売り込んでいくべきかヒントを探りました。
≪Creative summer camp 「CM試写会・ジモト面白さ発掘術クロストーク」
全国から集結した若手映像クリエイターが、新たな東北の売り出し方を制作表現する合宿型映像制作プログラムを展開している。「石巻と食」「会津と陶器」「赤湯と温泉」をテーマに制作された画像を見ながら、どうジモトの面白さを発掘するかを、参加したクリエイターの視点も交えてワークショップがおこなれました。クリエイティブ・サマー・キャンプは、3ヵ月をかけて地方の魅力を発信する30秒CMを制作しており、6月にオーデション(87人が参加で約半分が学生)1泊2日のロケハンワークショップでプロから学び、2泊3日の撮影を実施しています。完成した作品は渋谷交差点で上映するプログラムとなっていました。都会の若者が地方で学び、自らの作品を創ることに意義があり、クリエーターが仕事として取り組む一歩となっていました。
≪ボランティア・ワールドカフェ≫
7F会議室a,bでは、大学・高校生向けのワークショップ「ボランティア・ワールドカフェ」が開催され、「東北からのメッセージ」をテーマとして意見交換が活発に行われました。結果、「東北の現状(いま)を知る。東北で未来(これから)を考える。さあ、共に」が東北からのメッセージとして決定しました。
≪懇親会≫
懇親会では、復興支援インターンシップ(夏・冬)の活動が紹介されました。25大学400人の学生が参加し、気仙沼市、南三陸町、石巻市、女川町、亘理町、山本町の6市町の27企業にて、1週間の職場体験が行われ、学び、感じたことを情報発信しています。また、敬和学院大学、中央大学、立命館大学の3大学から実践したインターシップの報告がありました。懇親しながら、この度、リレートークで発表した方々と名刺交換して、インタビューするなど情報交換させていただきました。
【感想】
「新しい東北」フォーラムin仙台では、被災を乗り越えて様々な取り組みや、新たな挑戦が紹介されました。リレートークでのキーワードは「連携」であり、「地域と企業」、「地元と都市」など多様な連携による復興活動からの新たなコミュニティ形成や、新たな産業・商業につながるアイディアが創出されていました。地域のオープン化を図り、連携しながら外からの人材(マンパワー、ノウハウ、ネットワーク、情報発信等)を活用することが重要だと感じました。
被災地のみならず、地方でも、少子高齢化、人口減少といった深刻な問題を抱えており、この手法は、地方創生のお手本ともいえます。「新しい東北」に学び、「新たな地方づくり」への挑戦が求められます。復興庁との連携から、広義的な視点に立って、文化芸術からの復興の意義について、改めて深く考える契機となりました。

イベント名 | 『新しい東北』フォーラム in 仙台 ― 東北で進む「新たな挑戦」― |
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開催期間 |
2015年10月12日(月) 13:00~17:30(予定) |
エリア | 東北エリア(宮城県) |
開催地 | 宮城県 |
会場 | せんだいメディアテーク 1Fオープンスクエア/7Fスタジオシアター (宮城県仙台市青葉区春日町2-1) |
料金 |
無料 本フォーラムへのご来場をご希望の方は、「①参加団体名/②連絡先担当者名/③参加者予定者数」を明記の上、「フォーラム参加希望」として事務局(下記アドレス)にメールでお申し込みください。 |
問合せ先 | 新しい東北」官民連携推進協議会事務局(みずほ総合研究所)E-mail:nt-info@mizuho-ri.co.jp TEL:03-3591-8773 (平日9:30~17:30 |
主催 |
「新しい東北」官民連携推進協議会(事務局:復興庁) |