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芸術文化の新しいあり方の構築を

大澤 隆夫

支援・受援ネットワーク会議 会場の様子


 郡山での支援・受援ネットワーク会議では、発表者のそれぞれの取組みを直接本人から伺うことができました。たいへん貴重な経験で、大きく2つのことを実感をもって知ることができた、と振り返っています。
  一つは芸術文化が大震災後果たすことになったこれまでと違う新しい役割の存在、それはつまり、芸術文化の新しいあり方も示唆しています。セッション2での いわき市の劇場アリオス・大石さんの「一組みの親子のためにホールでコンサートを」という指摘は、原発被災地である福島からの文化芸術の概念や役割の組み 換えの「動議」とも受け止めるべき、重いものでした。ちなみに、私が所属する「音楽の力による復興センター・東北」が仮設住宅の集会所で開くコンサートの お客さまが10人~20人の少数であることは、さほど珍しいことではありません。


取組みの紹介をする報告者 (左から)加川氏、島田氏、川延氏取組みの紹介をする報告者 (左から)加川氏、島田氏、川延氏


 もう一つは、事例として発表された具体的な取り組みが、力強い実現可能性を参加者に印象づけたことです。私がコーディネーターを務めたセッション3で は、数メートル×十数メートルの巨大な震災画「雪に包まれる被災地」「南三陸の黄金」を背景に仙台・神戸それぞれの地域のアーティストがパフォーマンスを 繰り広げた芸術イベント『かさねがさねの想い』が画家の加川さん、神戸文化支援基金の島田さんから紹介されました。両氏ともに仙台・神戸以外での開催を希 望していましたが、海外も含めて開催の希望や提案が数多くなされました。


参加者に配付された資料の一部参加者に配付された資料の一部


 「巨大震災画によって、会場が特別な空間に変わり、そこで演じられる文化芸術も独自な意味合いを持つことに繋がっていく」という指摘もありました。
 これまで地域など限定された取組みも、多くの人々がその文化芸術が持つ力や可能性を共有し、実感するなかで、新たなネットワークを獲得し、さらに大きなスケールに飛躍することも十分あり得ることです。


  復興のためには経済の再建と市民生活の安定が最重要であり、文化芸術をどのように復興に役立てていくか、は極めて困難な試みです。峻険なルートの登山に例 えることもできます。登山では両手両足でしっかりした足場など3点を確保すれば、次の一歩を踏み出すことができるとされています。今回の郡山での集まり が、3点確保のきっかけになれば、と期待しています。

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