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復興と伝統芸能の力

東北文化学園大学総合政策学部教授 東北大学特任教授(客員)
志賀野 桂一

今私は、クリストファー・スモール著の『ミュージッキング』という本を読んでとても刺激を受けた。ミュージッキング(musicking)という氏独自の造語によって、現行の西欧発のクラシック音楽のあり方を批判的に論じている。いわく「音楽は、作品やものではなく行為であり活動である。」スモールによれば、パフォーマンスや、音楽活動を支える諸事もすべてミュージッキングという概念に包摂されている。また「儀礼はすべての芸術の母である。」との言辞もある。


第1セッション「復興と伝統芸能の力」の進行役を務めた私だが、改めて文化芸術による復興推進のプラットフォームとしてのコンソーシアムの大切さを感じた、と同時に復興の目に見える成果については十分なイメージを取り結べないまま帰ってきたところである。それにしても十分な時間のない中、報告者の八巻さん、阿部さん、小岩さんありがとうございました。


このテーマは、東北各地に存在する郷土芸能(私は常在文化と呼んでいます)が地域の生活と一体で育まれ継承されている、ことから、芸能や祭りの復興が地域の復興や再生と直結するという観点から設定されたものである。
マチゲキで神楽舞台をつくりお神楽を振興する八巻さん、膨大な映像を撮り続ける阿部さん、震災前と震災後をよく知る2人から地元の人々の「文化まで流されたのではない」という強い思いがその後の活動を支えている様子などが、報告された。多くの郷土芸能は奉納(儀礼)のための氏子たちによる芸能として生まれ、幾多の厄災を潜り抜け伝わってきている。伝承されてきた芸能の再生は、それぞれの地域の人々の記憶と心底に刻まれた音楽や所作を呼びさまし、生き残った人々の生きる証となり力になる。
小岩さんのアーカイブは、東北沿岸に点在する芸能を拾い集める貴重な活動である。こうした学術的な総合化と現場の活動を結ぶプラットフォーム、さらに、多くの観客を呼び寄せる芸能祭などのわかり易い仕掛けも必要ではないかと思われる。
文献の開示だけでは広がらない。ミュージッキングが教えるところの行為としての郷土芸能が生きいきと伝わるためのカタチが求められているのではないか。また、JCDN(代表:佐藤範一)の「習いに行くぜ!東北へ!!」も優れた《現地寄り添い型》の活動で、新しい支援のカタチを示唆するものでないかと考えるところである。

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