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【震災から3年】いつまでも忘れない~いま大切なのは、つづける“わ” Vol.2 つながる・つなげる岩手県民会館「震災復興支援事業」について

岩手県民会館 館長
菊池 和憲

 岩手県民会館は「文化芸術の普及振興を図り、県民生活の向上に寄与する」目的で設置されたことから、開館以来市町村と連携し、より良い文化を県民に提供する企画「移動県民会館」事業を行ってきた。この事業は、単に県民会館自主事業公演を持ち込むのでははく、県民自ら文化に触れることで新たな文化創造を促す企画として親しまれてきた。
 東日本大震災以降はこの「移動県民会館」から「震災復興支援事業」と名を変え、沿岸市町村の会館が機能していない=文化拠点が無い地域の学校を中心に自主事業公演で関わったアーティストと協同し訪問演奏会を行っている。なお、当館が行う自主事業は指定管者理制度の予算には含まれておらず、県から事業予算は一切出ていない。また、当事業団が行っている文化庁事業「文化芸術による子供の育成事業 ~東日本大震災復興支援対応~」とは別事業である。
 これまで実施した「震災復興支援事業」は次のとおり。


◆平成23年度


① 訪問演奏会事業


4月30日:岩手県民謡演奏家による訪問民謡演奏会
      大船渡市民文化会館エントランス 来場者約50名


5月31日~6月1日:ヴァイオリニスト神尾真由子さんによる訪問演奏会
           大船渡市立甫嶺小学校 3~6年生対象約80名
           宮古市立磯鶏小学校 全校生徒及び近隣住民約120名
           宮古市立鍬ヶ崎小学校 2~4年生約100名


6月24日:盛岡アマチュアマジシャンズクラブによる訪問公演
      宮古市特別養護老人ホーム「サンホーム」 入所者約50名


8月30~31日:オーストラリア大使館、NHKエンタープライズとの連携による
         「オーストラリア出身ジャズミュージシャン訪問演奏・文化交流会」
         陸前高田市立気仙中学校 全校生徒約100名
         陸前高田市立広田中学校 全校生徒約100名
         宮古市立鍬ケ崎小学校 全校生徒約200名


9月29~30日:ピアニスト萩原麻未さんによる訪問演奏会
         山田町立山田北小学校 全校生徒約80名
         大槌町立大槌小・大槌北小 1~4年生約100名


② コーディネート事業


11月7~9日:大船渡市立起喜来・崎浜・甫嶺小学校
        「~Arigato Concert @サントリーホール~」出演に係るコーディネート


③ 市町村連携事業


11月3~4日:大船渡市との連携による東日本大震災復興祈念事業「ざ・CLASSIC‘11」
        大船渡市民文化会館 大ホール 来場者数約700名
        岩手県民会館 中ホール 来場者数約400名 


④ その他


釜石市物資支援センターなど支援センター5か所、県立山田高校ほか学校8か所
衣類 3,500点、食品 100点、文具等その他 5,500点


◆平成24年度


① 訪問演奏事業


5月5日:NHK交響楽団員による訪問演奏会
     山田町中央公民館大ホール 来場者数約450名
     久慈市文化会館大ホール 来場者数約350名


9月11月:オーストラリア大使館、NHKエンタープライズとの連携による
      「オーストラリア出身ジャズミュージシャン訪問演奏・文化交流会」
      八幡平市立松尾中学校 全校生徒約100名
      大槌町立吉里吉里中学校 全校生徒約100名


② コーディネート事業


9月7~9日:大船渡サンドパイパース・オーケストラの「東京JAZZ」出演に係るコーディネート


③ 市町村連携事業


10月29日:大船渡市、NHKエンタープライズとの連携による
       「Put Our Hearts Together in大船渡」公演
       大船渡市民文化会館大ホール 来場者数約900名


◆平成25年度


① 訪問演奏事業


5月7~8日:ピアニスト萩原麻未さんによる訪問演奏会
       釜石市立平田小学校 全校生徒約170名
       野田村立野田小学校 2~6年生約100名


7月4日~7日:ピアニスト小山実稚恵さんによる訪問演奏会
        陸前高田市立高田小学校 全校生徒約300名
        洋野町立宿戸中学校 全校生徒約80名


9月11~12日:オーストラリア大使館、NHKエンタープライズとの連携による
         「オーストラリア出身ジャズミュージシャン訪問演奏・文化交流会」
         宮古市立津軽石中学校 全校生徒約120名
         山田町立山田中学校 全校生徒約400名
         岩手県立大槌高等学校 全校生徒約270名 


② コーディネート事業


8月15~19日:大船渡サンドパイパース・オーケストラのアメリカ・トラバースシティ
         「ステート・シアター」出演に係るコーディネート


③ 市町村連携事業


7月4日~7日:山田町との連携による「ピアニスト小山実稚恵さん訪問演奏会」
        山田町中央公民館 大ホール 来場者数約450名


◆平成26年度


① 訪問演奏事業


9月11~12日:オーストラリア大使館、NHKエンタープライズとの連携による
         「オーストラリア出身ジャズミュージシャン訪問演奏・文化交流会」
         釜石市立釜石東中学校 全校生徒約160名
         大船渡市立赤崎・蛸の浦小学校 4~6年生約90名
         大船渡市立赤崎中学校 全校生徒約130名


9月18日:「ざ・CLASSIC」公演訪問演奏会
       宮古市立津軽石小学校 全校生徒約210名
       宮古市立宮古小学校 1~4年生約150名 


10月28日:ヴァイオリニスト神尾真由子さん&フランツ・リスト室内管弦楽団による訪問演奏会
       大船渡市起喜来小学校
       陸前高田市立気仙学校


② コーディネート事業


5月4~5日:NHKとの連携による「NHKスマイルキャラバン」に係るコーディネート
       大船渡市民文化会館 マルチスペース 来場者数約200人


③ 市町村連携事業


8月10日:大槌町、兵庫県芸術文化センターとの連携による
      「佐渡裕&スーパーキッズ・オーケストラ(SKO)
       2014年度 東日本大震災復興祈念演奏活動
       東北に“心のビタミン・音楽”を届けるプロジェクト」
       大槌町立城山体育館 来場者数約900名


④ 被災3県連携事業


東日本ジャズ・サーキット
9月7日:「寺久保エレナ ジャズ・クァルテット」
      東京エレクトロンホール宮城 大ホール 来場者数約850人


 9月12日:「LIVE・IN・ふくしま」ジャズ・コンサート
       福島県文化センター 大ホール 来場者数約1400人


9月15日:「いわてJAZZ 2014」
      Red Side 岩手県民会館 大ホール 来場者数約1800人
      Blue Side 岩手県民会館 中ホール 来場者数約350人


 


 となっており、中でも主として実施した被災地での演奏会への総参加者数は7,500人を数えた。  活動当初は、アーティストから「本当に音楽が“心の復興”につながるのか疑問だ?」といった意見があり、被災地で演奏や文化活動を行うことに対して疑問をもつ方が多かったが、実際に訪問演奏会を行い生徒や来場者の反応を見て「これほど音楽に力があるとは思わなかった。そして、逆に生徒達から勇気をもらった。継続して支援したい。」といった考えへと変化していった。また、生徒や来場者からは「久しぶりに音楽に触れて、とても癒された。」や「演奏を聴いて少し震災のことを忘れることができた。」といった感想が多数寄せられた。このことからも「震災復興関連事業」をとおして、アーティストと生徒や来場者の間には“心と心のつながり”が生まれている。


 これまで、「心の復興」を目指し3年半の間、訪問演奏会を中心に「震災復興関連事業」を実施してきたが、これからは、被災地の公立文化施設復旧とともに魅力ある文化芸術事業が求められるようになるだろう。そのため、市町村と連携した事業展開を増やすとともに、「東日本ジャズ・サーキット」企画のように被災県同士の連携事業を行い、互いに協力し文化を発信することで生まれる“文化的つながり”を重要視した事業展開に取り組んでいきたい。


 また、あくまでも当館が行っている「震災復興関連事業」に於いての今後の課題であるが、「心の復興」の終着点が見えないことへの不安の払拭、「震災復興関連事業」を継続するための体力維持や経済力、被災館の復旧に伴い必要とされる“新たな文化発信事業”を行うための企画力が挙げられる。これまで実施した事業を検証し、「心の復興」がどれだけ進んでいるのかを見極め、どのような時期に市町村の事業へシフトしていくのか、事業を継続するにしても何が求められているのかを認識し、その事業を継続するための新たな人材確保や助成金等の更なる活用する必要がある。なお、被災地からの新たな文化発信に於いては、被災市町村(会館が復旧する前提)と連携し、会館復旧に伴う新たな人材を文化拠点施設などである一定期間アートマネージメント研修を行うことで、事業の実践力と企画力を養い、その市町村に合った文化事業を創造することが、新たな文化発信に“つながる”のではないだろうか。


コラムをまとめて読む場合は、下記からご覧ください。

プロフィール

岩手県民会館 館長
菊池 和憲
1952年岩手県奥州市で生まれる。
昭和45年4月 岩手県職員採用。
岩手県教育委員会事務局総務課、林業水産部漁政課、総務部総務学事課、企画調整部広報広聴課、土木部道路環境課、商工労働観光部観光課、(財)岩手県観光協会などに在職。
平成24年3月 岩手県退職。
平成24年4月 岩手県民会館。現在に至る。

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