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【震災から3年】いつまでも忘れない~いま大切なのは、つづける“わ” Vol.7 『音楽で日本を元気に!』

ウィーン・フィル&サントリー音楽復興基金 事務局

 


 ウィーン・フィル&サントリー音楽復興基金は、東日本大震災を知ったウィーン・フィルハーモニー管弦楽団からサントリーホールを通して「震災に遭われた最も大切な日本の友人たちへ、お見舞の気持ちを伝えたい」という寄付の申し出がきっかけでした。長年、同楽団の日本公演のパートナーとして信頼関係を構築してきたサントリーホールディングス株式会社もこの主旨に賛同、1億円ずつ計2億円の拠出によるマッチング・ファンドとして2012年4月に設立しました。音楽を通じて、被災地はもとより日本全体に活力を与える活動を継続的に実施することを目的に、公演事業と助成事業の2つの柱で実施しています。


 1つめは公演事業で、5年間実施のこどもたちのためのコンサート。ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のメンバーが、毎年被災地を訪れ、こどもたちとその家族のためにコンサートを開催しています。2012年は14名が宮城県仙台市・名取市・岩沼市、2013年は7名が岩手県下閉伊郡山田町、2014年はウィーン・フィルハーモニー管弦楽団が福島県郡山市で小・中・高校生を対象とした公開リハーサルを、翌週にメンバー10名と堤剛(チェリスト・サントリー芸術財団代表理事・サントリーホール館長)が南相馬市で、献奏と学校や会館でのコンサートを行いました。世界中を飛び回り多忙な彼らの貴重なオフの時間を費やしての活動です。


 こどもたちのためのコンサート(南相馬市立鹿島小学校)


 こどもたちのためのコンサート(郡山市民文化センター)


いつもすばらしいホールで演奏をしている彼らですが、毎回慰霊碑前などの屋外での献奏を希望し、手がかじかむ寒さの中、あいにくの雨天の中(屋内を提案したにもかかわらず)差し出す傘のもとで、また、学校の体育館の中、クラシックコンサートが初めての方も多い中…と、どれもいつもとは違う環境の中、場所を厭わず、誰もが皆熱心にリハーサルを重ね、本番での心のこもった演奏に、いつも感心するばかりです。


宮城県名取市閖上(ゆりあげ)地区 日和山での献奏


 南相馬市八沢地区慰霊碑での献奏


聴く側からも御礼にと、こどもたちの合唱や合奏、花束などのプレゼントをはじめ、亡くなられたご家族の写真を持って聴きにいらっしゃる方々、ご自分の楽譜を持参しサインを求めるお客様など…、心温まる交流が続いています。さらに、音楽に取り組むこどもたちを応援するため、仙台ジュニアオーケストラの指導を5年間継続して行います。短い時間ながらメキメキと成長するこどもたちを見ると、将来この中から世界で活躍する演奏家が出ることを夢見ます。


 仙台ジュニアオーケストラへの指導


 


 2つめは助成事業で、10年間実施のウィーン・フィル&サントリー音楽復興祈念賞。日本の音楽文化を活性化することで、被災地または日本に活力を与え続けていきたい願いにもとづき、全国の団体・個人から目的に沿った活動を募集、選考された活動に賞を授与し、助成金を交付。また、受賞者の希望に応じて、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のメンバーが演奏・指導等に参加するというものです。現在、第3回までが決定しており、合計46の活動に賞を贈っています。東日本大震災直後は様々な復興支援活動が行われてきましたが、3年や5年を目処に終了する活動も多いと耳にします。そんな中、音楽復興祈念賞は10年間継続してまいります。音楽活動をまだ再開出来ない方、これから新たに始める方もいらっしゃることでしょう。10年継続の意義が見えてくるにはもう少し時間が掛かりそうですが、<音楽で日本を元気に!>は変わりません。幅広い活動が対象です。皆様のご応募をお待ちしております。


第2回音楽復興祈念賞(京都フィルハーモニー室内合奏団)


第2回音楽復興祈念賞(アマデウス室内管弦楽団)


 


 震災からまもなく4年となり、復旧は進んでいます。しかしながら、報道も減り、東京にいるとつい忘れてしまいそうですが、被災地を訪れるたびに、更地のままの広大な土地、たくさんの工事車両や仮設住宅を目にし、また、解決されない問題がたくさんあると耳にし、復興の道のりはまだ遠いことを思い知ります。巨大な地震とそれによる津波や原発事故という甚大な被害をきちんと伝え、風化させてはいけないことを強く感じます。被災地の皆さんが、厳しい環境の中でも笑顔で頑張っている姿を見て、自分には何が出来るのだろうと考えます。活動に参加したウィーン・フィルのメンバーが「私達には音楽を演奏することしか出来ません。この音楽で希望が持てるよう、少しでも助けになるよう、心を込めて演奏します。」とインタビューに答えていたのを思い出しました。この基金の事業を通じ、音楽には目に見えない大きな力があることを改めて知りました。すばらしい音楽を聴く感動、自ら仲間と一緒に練習し演奏する喜びや達成感、未来を担うこどもたちの成長、皆さんのたくさんの笑顔や涙を目にし、こちらのほうが元気をいただいています。東日本大震災の直後は、自粛ムードで文化・芸術系イベントの在り方も問われたりもしましたが、辛い時、苦しい時こそ音楽などで心が癒されたという事実もあります。また震災から4年となるこれからが、心の復興へのスタートかもしれません。<音楽>がその助けとなるよう、この事業をしっかりと継続してまいりますので、皆様のご参加を、そして応援をよろしくお願いいたします。

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