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レポート
【取材レポート】邦楽体験学習を通じた被災地の子どもたちの心の支援

イベントレポート
文化芸術による復興推進コンソーシアム エグゼクティヴ・コーディネーター   渡辺 一雄

 昨年来実績のある日本尺八連盟(坂田誠山会長、「コンソーシアム」賛同団体)による邦楽体験学習が(公益財団法人)福島県文化センターの依頼(紹介)により、26年9月30日、郡山市立喜久田小学校(5年生、6年生)において、更に11月28日には田村市立常葉中学校においてそれぞれ実施された。
 同行取材の概要は以下の通り。


郡山市立喜久田小学校


1. 市立喜久田小学校と尺八・箏体験学習の実施方法については、当初は何れも視聴覚教室を使い5,6学年の該当クラス(2クラス)合同の音楽の学習とすることとし、学校からは事前に送付した教則、練習曲を内容とする「テキスト」を配布する準備を頂き、その内容に沿い行うことになった。


2. 同校は他の自治体から避難している児童4名を含み、放射能対策の万全を期して3年目の心身の復興に取り組んでいる。また、児童の自主性・自律性を養う観点から始業・終業のチャイム(放送)がない特色のある学校である。


3. 体験学習
 音楽の授業(45分)はかなり忙しいスケジュールであったが、「春の海」(箏との合奏)、桜変奏曲(箏独奏)の生演奏後、尺八・箏の構造の説明があった。
 アニメーション・朝ドラ(アマちゃん、アンと花子)・ポピュラーメロディー集の尺八演奏(さて何曲?当てっこゲーム)には懸命に耳を傾ける子どもたち。
 54センチ(1尺8寸管)の音だしは毎回のことながら、悪戦苦闘ぶりがどの子にも共通したほか、音楽教諭・学校長の挑戦も実らぬままにタイムアップ。尤も1割ぐらいの児童からは微かな音色が・・・。


 校地内・街中の除染は終わり、平常の活動に戻りました。子ども達はとても元気です。“今後は近くの山や森や川でののびのび学習”が校長の切なる願いとのつぶやきが印象的であった。
 尺八連盟からは塩ビ管20本の寄贈、子どもたちから御礼の代表挨拶を受ける。
 “もう帰るの?”とは箏に実際に触れた何人かの子どもたちから漏れた感想、後ろ髪をひかれる思いを禁じ得ない。
 “また来るから、上手になって聞かせてね!”との言葉を残し、一路東京へ。


 


 


田村市立常葉中学校



1. 常葉中学校は、昭和22年創立の学校、現在163人の生徒が通う阿武隈山系の小高い丘にある。総じて“山間の子どもたち”という素朴な印象(礼儀正しい)の生徒たち。
 2011年の震災時は震度6弱の揺れに襲われ、体育館は全壊。
 直後は近隣地区の中学校の避難生徒を倒壊を免れた校舎に迎え入れた。放射線量による居住制限区域(双葉町など)と隣接(30キロ)するが同校区は生徒避難とはなっていない。
 全国合唱コンクール金賞・文部大臣奨励賞受賞(平成7年)のほか駅伝大会でも上位の戦績を誇る文武両道の伝統校。


2. 体験学習
 邦楽の生演奏は全くの初めての体験とのこと、合唱練習・イベントに堪えうる音響効果に優れた新築体育館(25年4月竣工・引渡し)での演奏、尺八の体験学習となった。
 全校生徒の一斉学習方式をとり、全校6クラスから選抜された各8人の2コマ(90分)の邦楽演奏・尺八体験。



 これまでで塩ビ管の尺八体験のなかで最多の子どもから“音だし”の音が流れる。
 「教則」、「体験用楽譜」の一通りを学習。最後に箏・尺八の邦楽演奏に合わせ“赤とんぼ”の生徒たちの合唱で締めくくった。
 生徒会代表のお礼のことば(音出しは難しかった。しかし、箏の生演奏は音楽の授業で体験したものを遥かに超える感動を受けた等の感想)、花束贈呈と続いた。
 山間につるべ落としの陽が陰り始めた阿武隈の山間で育んだ純朴な生徒たちの想いに心残りの感を禁じ得ない。今回もそうした余韻を胸に一路東京へ。

イベント概要
開催期間 2014年09月30日(火)~2014年11月28日(金)
エリア 東北エリア(福島県)
開催地 福島県
会場 郡山市立喜久田小学校 / 田村市立常葉中学校
料金 無料

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