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レポート
【取材レポート】福島大学×日生劇場×人形劇団ひとみ座 『わくわくシアター ~人形劇&ワークショップ~』

イベントレポート
事務局ブログ

 1月31日、福島大学人間発達文化学類の学生たち31人が、同大附属幼稚園で人形劇を上演しました。披露した演目は「オオカミと7匹の子ヤギ」と「シンデレラ」。
 この人形劇は、日生劇場(公益財団法人ニッセイ文化振興財団)の復興支援事業として、人形劇団ひとみ座のスタッフが、保育士や幼稚園の先生を目指す福島大学の学生に、人形作りや演技指導する講座が開講されたことにより実現したプロジェクトです。

 「ひょっこりひょうたん島」で知られる有名な人形劇団ひとみ座のスタッフが、大学の授業「総合表現(劇)」で講師を担当し、講座が始まったのが2014年10月。翌年1月末までの4ヶ月の間で、学生たちは、会場探しから、台本作り、発声、人形製作、そして、稽古を重ね、その成果を1月に地域の子ども達に向けて上演します。その間、14回にわたり、ひとみ座のスタッフが指導してきましたが、もちろん、本番は学生たちだけで切り抜けなければなりません。


 前日の雪が残る福島市。私が会場である福島大学附属幼稚園を訪れると、リハーサルがちょうど終わり、各自最終確認の真っ最中でした。学生たちからは、本番前の緊張感溢れる空気が伝わってきます。



 この企画をプロデュースした、日生劇場の島さんに会場をご案内いただきました。この企画に込める想いを伺いました。

―『日生劇場は震災後、子ども達の心のケアの一助として、避難所・児童センター・学校体育館等で子ども向けのコンサートやひとみ座による公演を続けてきました。(今年まで、26ヶ所で実施)。
 震災から4年近くが経過し生活が落ち着きを取り戻す中、今年度は新たな形で支援を行うことにしました。「公演形式」はどうしても回数が限られてしまいます。そこで、プロのノウハウを伝授し、地元の方が自ら、地元の子供たちに劇を観せる機会を創ることが出来たら、私達が帰っても、子供たちに笑顔を届け続けることが出来ると考えたのです。』―

 現地で公演活動を行っている団体や、日頃子どもに接している保育者たちに、ひとみ座が持つ制作・上演のノウハウを教授することで人形劇の上演スキルを普及・向上させ、より広範に「観たい」側と「見せたい」側が現地で結びついていくことをめざして、スタートした今回の企画。
一緒に劇を創っていくパートナーに、福島大学人間発達文化学類子育て支援クラスの学生たちを選んだのはなぜでしょう。

―『保育士や幼稚園の先生を目指すこのクラス卒業生の多くは、幼稚園や保育所の保育者として就職しています。将来保育者として子どもに接する学生に、プロのノウハウを教授することによって、より広範に子どもに楽しい経験を与えることを目指しました。この31人の学生が、卒業後、各地へ散らばっていけば、31箇所それぞれで、人形劇の魅力を伝えていけると思います。』―




 午後に本番を控えた休憩時間。あちこちで開場ギリギリまで、練習をしている学生たちの姿が。こちらでは芝居の確認、あちらでは歌の練習、どこからか発声練習が聞こえてきます。

 「去年の10月に学生たちと一緒に人形を製作していた頃と比べると、だいぶ一体感が出てきましたよ。ここ2週間くらいで一気にテンションが上りましたね。」と、ひとみ座で人形美術を担当する横田左千子さんが学生の成長を語ってくれました。学生たちは、この4ヶ月を通して、次第に自分を開放出来るようになったようです。



 開場時刻の13時になりました。地元の子供たちが次々とやって来ます。学生たちは、自ら駐車場の誘導や受付を行います。更に、この日は、本来の予定より早く幼稚園に集合し、駐車場の雪かきまで行ったそうです。みんなで創る人形劇。愛着の詰まった手作りの公演です。




 会場は子どもたちでいっぱいになりました。
 さぁ、いよいよ本番。まずは「オオカミと7匹の子ヤギ」の上演です。



 オオカミが部屋に隠れた子ヤギを探しながら追い詰めていくシーンでは、子どもたちがみんなで「ここにはもういないよ!」と必死に子ヤギをかばう姿が見られ、とても微笑ましかったです。ハラハラ・ドキドキな展開に、子どもたちは夢中になっていました。
 登場するキャラクターが多いので、それぞれの立ち位置や、人形の動かすタイミングなどが難しい演目だったと思いますが、それらを感じさせない学生たちのスムーズな演技を見て、ひとみ座の皆さんとたくさんの稽古を積んできたのだろうと関心しました。


 学生たちのチームが入れ替わり、続いては、人形劇「シンデレラ」の上演です。



 おなじみのあるシンデレラのストーリーに、歌や笑いのエッセンスを取り入れた、遊び心が満載の台本。
 シンデレラが魔法にかけられるシーンなど、演出力が求められる演目です。会場をいっぱいに使って「舞踏会」らしさを演出するなど、細かい作り込みがされていて、シンデレラが家で寂しそうにしている様から、華やかなお城の中へと場面が変わっても、それぞれの情景がきちんと目に浮かびました。優雅な舞踏会の雰囲気を、子どもたちも体を揺らしながら楽しみます。
 物語の途中、小道具のシンデレラのリボンが客席に落ちてしまうというアクシデントが起きましたが、機転を利かせたアドリブで芝居を繋げることが出来ました。



 


 人形劇が終わった後は、もう一つのプログラム『ワークショップ』の時間です。講師は劇団ひとみ座の山下潤子さん。学生たちはアシスタントを務めます。山下さんは福島大学教育学部の卒業生でもあります。在学中、児童文化研究会に所属し、表現活動の奥深さを知り、ひとみ座に入団したそうです。

ワークショップでは、子どもたちや保護者の皆さんと一緒に人形を創ります。会場全員に配られた封筒に書かれている線にそってハサミを入れると… 可愛いネズミさんになりました! 子どもたちは大喜びで人形を持って帰ります。



 


 学生たちに感想を伺うと「自分の顔や体を使って伝えることが制限される分、人形を使って表現するのは難しかったですが、とても面白かった。」と、表現活動の奥深さと楽しさを実感できた様子です。また、演技だけではなく、効果音づくりや運営などの制作についてもそれぞれこだわりを持つことができたようです。

 実際に人形劇を観て、学生たちのポテンシャルの高さに驚きました。子どもたち一人ひとりと向き合いながら、大きな声でゆっくりとセリフを紡ぎ出すその丁寧さは、子どもを相手にするプロを目指している学生ならでは。人形劇を通して養った表現力は、子どもたちとの日頃のふれあいの中にも役立つことでしょう。


 最後に、この講座を担当している白石教授にお話を伺いました。


―「この《総合表現(劇)》という講座は平成17年から行ってきましたが、私達は表現のプロではないので“こういう時、どう演出したらいいだろう”と悩むことがありました。今回、日生劇場とひとみ座のノウハウや演出力を学ぶことが出来たのは、私達にとっても大きなことです。今日、人形劇を披露した学生たちの中には、サークルなどで後輩の劇を指導する機会がある者もいます。また、今回学んだ内容は、来年以降の授業で活かしていくつもりです。」―


 


 この復興支援事業は、学生にとって、プロの技術を学べるまたとない機会となりました。

 それぞれが各地で保育士や幼稚園の先生になったときに、子供たちに表現することの楽しさを伝えてくれることでしょう。

 被災地の方が自ら、地元の子供たちにも笑顔を届ける為の支援を行う。今後、こういった支援活動が広がりを見せてほしいと思います。

 学生たちの未来に、期待です。

イベント概要
イベント名 福島大学×日生劇場×人形劇団ひとみ座 『わくわくシアター ~人形劇&ワークショップ~』
開催期間 2015年01月31日(土)
開場 13:00
開演 13:30
エリア 東北エリア(福島県)
開催地 福島県
会場 福島大学附属幼稚園
料金 無料

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