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レポート
【取材レポート】第3回 国連防災世界会議 直前イベント『ひとのちから ~祈りを奏でる、祈りをおどる~』

イベントレポート
事務局ブログ

 2月、せんだいメディアテークにて開催された『第3回国連防災世界会議 直前イベント《ひとのちから ~祈りを奏でる、祈りをおどる~》』を訪れました。  

 2015年3月14日から18日まで、世界各国の代表が国際的な防災戦略を議論する国連防災会議が仙台市で開催されます。この催しは、国連防災世界会議の直前イベントとして、東日本大震災後に活発に行われた「復興コンサート」などの活動を演奏と展示を振り返りながら、震災からこれまでの人びとのそばに寄り添ってきた文化や芸術の力をあらためて考える場として開催されました。
 東日本大震災の犠牲者になられた方々を鎮魂し、傷ついた人びとの心に寄り添い、励ましたいという切なる祈りから生まれた文化芸術活動。その《ひとのちから》について考えさせられるプログラムの数々をレポートしたいと思います。


 


復興コンサートについて
 仙台フィルハーモニー管弦楽団と地元音楽家有志は、震災後すぐに「音楽の力による復興センター・東北」を立ち上げ、避難所や仮設住宅、学校、街角などに出向き、被災した方々のもとへ音楽を届けました。その小さな演奏会は「復興コンサート」と呼ばれ、第1回コンサートは2011年3月26日、仙台宮城野区の見瑞寺境内にあるバレエスタジオで行われました。音楽を耳にした人びとが見せた涙や笑顔に、私たちは音楽には人の心に直接働きかける力があることを実感したといいます。
 以来、その活動は現在も続き、2014年末で440回を超えました。仙台フィルおよび(公社)日本オーケストラ連盟加盟楽団員、フリーランスで活躍するプロフェッショナルの方など、多くに音楽家に参加し、また、被災3県の行政、社会福祉協議会ならびに復興支援団体や個人支援者との協働で継続しています。



 最近では復興コンサートのほかに、仮設住宅および被災地域に住む高齢者による合唱団を結成したり、復興公営住宅での歌声喫茶を開催するなど、状況の変化に応じた支援活動を展開しています。
よく「心の復興」と言われますが、その道のりは長いでしょう。それでも、音楽の力が少しでも生きる希望になることを願って、音楽を通じて人びとの心に寄り添って行きたいと考えておられるとのこと。



 会場であるせんだいメディアテークオープンスクエアには、画家・加川広重さん描いた巨大水彩画が設置され、この作品をバックに、踊り、絵画、物語がコラボレートし、新たな総合芸術が表現されました。


《朗読》『遠野物語 第九九話』 藤原 貢
 東北の伝承を集めた「遠野物語」の第99話から。明治三陸津波(1896年)で妻と子2人を亡くした男「福二」が、妻の幻影に誘われ浜に一晩立ち尽くすという物語。



 


《踊り》金津流石関獅子躍『礼庭』
 金津流獅子躍は伊達藩士犬飼家に代々伝わる踊りで、1700年代から続いています。1779年に宮城郡国分松森村(現在の仙台市泉区松森)の源十郎から、石関(現在の岩手県奥州市江刺区石関)の肝煎り小原吉郎治に伝承されたのが始まりで、以来、昭和初期まで踊られていましたが、戦争で一時中断。平成になり復活への動きが起こり、平成23年には金津流の一切を伝授され完全復活、犬飼家の墓参りと泉区松森の地で踊りを披露し、里帰りを果たしました。現在は15代目の後継者を育成中です。



 太鼓の音、唄声、踊りのキレとも抜群で、細かなところまで洗練されており、見事な獅子躍りでした。


 


《演奏》仙台チェンバーアンサンブル



 「仙台チェンバーアンサンブル」は2006年結成以来、「音楽とコミュニケーション」をテーマに活動しています。これまで「東北電力コンサート」「宮城県芸術銀河アウトリーチコンサート」「文化庁芸術家派遣事業」などで200校以上の小中学校、幼稚園などで演奏し、音楽の喜びを分かち合い、東日本大震災後3月31日には登米市の避難所で地元の中学校吹奏楽部と合同演奏を行っていました。音楽の力による復興センター・東北の「復興コンサート」活動にも多数参加しています。
 プッチーニの「歌に生き、愛に生き」、《トスカ》 のなかでもっとも有名なアリアで、激しくも切ないトスカの全人生が示され、数あるソプラノのアリアのなかでも屈指の名曲が演奏され、被災地において多く演奏されてきた「アメージング・グレイス」、そして東日本大震災後に荒芳樹さんが作曲した「これからのこと」がバックの巨大絵画が相俟って、震災への様々な思いを回想することができました。


 


《演奏》クレモナからの贈りもの



 ストラディバリウスやアマティなど、16世紀からヴァイオリン製作の名工一族が数多く暮らしたイタリア中部の町、クレモナ。クレモナ国立弦楽器製作学校の副校長スコラリー氏が「被災した子供たちを励ましたい」とかつての生徒が卒業製作した楽器を仙台と福島のジュニアオーケストラ団体に贈ったそうです。
 この日は仙台ジュニアオーケストラ団員有志が演奏。クレモナから届けられた4本のヴィオラの音色が巨大絵画に共鳴して響きました。
ジュニアの皆さんは「クレモナから戴いたヴィオラ、音にしてお返ししたい」「今日は被災した人々に私たちの音楽を届けたい」「被災者の心を和らげるのが私たちの使命です」「私はありのままを表現します。生きている実感を込めながら演奏します」とそれぞれの力強いメッセージがあり、ヴィオラのアンサンブルを、心を込めて届けてくれました。


 


国際防災世界会議パブリック・フォーラム紹介① ~テーマ館について



《マチノワ つながる思いを、マチのチカラに》『市民協働と防災』
 震災後に地域で取り組んだ様々な事例や協働で取り組んだ活動を、シンポジウムやワークショップ、展示などにより市民が発信し、共有する場にします。
 地域防災やマンション防災、地域情報発信、防災教育、子どもに対する取組、子どもによる活動、震災後に被災地に入った活動団体から報告などを、4つのテーマ(「ひきだす」、「ささえる」、「つながる」、「ひろげる」)に沿って展開します。また、世界の市民同士が学び合う場となる「市民防災世界会議」も開催します。と『市民協働と防災』について紹介がありました。


 


《トーク》ひとのちから、音楽のちから


 被災後、被災された方々の心を癒し、勇気づけてきた音楽。被災地の学校等を訪れ演奏活動をされているピアニスト小山実稚恵さんと、避難所や仮設住宅等における「復興コンサート」を取り続ける写真家佐々木隆二さんに、活動中で感じた「音楽のちから」について語ってくれました。聞き手は奥山仙台市長。トークの合間には、被災地で演奏されたリスト「愛の夢 第3番」とショパン「ポロネーズ第6番 変イ長調『英雄』の力強く美しい演奏を奏でました。



 写真家の佐々木さんは「被災地が変われば、住民の顔も変わる。一人ひとり実状が違う、苦しみ悲しみも違う。だが、音楽は人々に分け隔なく入って一体化する。「笑み」が伝線していく・・・。」その瞬間の笑顔を撮り続け、被災地でずいぶん教えてもらったという。奥山市長さんは、震災後、仙台フィルは失業し、心配していました。それからまもなく、ボランティアとして被災者への演奏活動を始めてくれました。本当に有り難かった・・・。」と音楽家の寄り添う力を絶賛しました。そして演奏家の小山さんは「音楽の力は凄い力を持って、それが何かのきっかけになる。避難所、学校で演奏し、演奏環境を大分心配されましたが、楽器ではない、常に心で演奏しているから・・・。」とさすが一流です。弘法筆を択ばずと言いますが、演奏するミッションを捉えていました。ピアノ演奏は、強弱の音色を匠に操り、巨大絵画と一体となり、心のこもった音魂を放ちました。


 


 


国連防災会議パブリック・フォーラム②
 ~公式ロゴマークと各種イベントについて


《想いは 立ち上がり つながり 広がる》『女性と防災』



 国連防災会議では、防災・減災に取り組む地域団体、NPO、自治体、国際機関などにより、男女協働参画や多様性配慮をテーマとした14のシンポジウムが開催される他、テーマ館主催シンポジウム「女性と防災~仙台発 東日本大震災4年後の視座~」を始め、被災地東北・日本・世界の女性たちの、災害に強いまちづくりに向けた取組を様々な切り口から発信するシンポジウムが開催されることが告知されました。


 


 


《踊り》金津流石関獅子躍『墓回向~島霧』



 鹿踊(ししおどり)の「シシ」とは古語で野獣の肉のことであり、鹿踊には人が食物としてその命をいただくシシへの供養の意味がこめられたとも言われます。五穀豊穣・国家安穏、悪魔退散を祈念し、お盆には新盆の家々を回って墓回向(はかえこう=追善供養)を行うなど、暮らしの中にある踊りです。


 


《トーク》ひとのちから、踊りのちから



 金津流は最も儀礼を重んじる流派で、特に石関鹿子躍は心技体に伝える団体です。トークでは鹿踊の意義や歴史、衣装、踊ることの魅力、震災が郷土芸能に与えた影響について話してくれました。



 鹿踊にみられる特徴はササラで、材質は唐竹を使い和紙を貼り付け長さは2メートルにもなり、非常に良くしなり、雌鹿は他のササラより短くなっているようです。ササラは今でいう「アンテナ」の役割があり、天高く伸びたササラを伝い天空の神の言葉をカシラに宿して、それを踊りに表現しているそうです。


 


《演奏》カルテット・フィデス



 仙台フィルハーモニー管弦楽団メンバーによる弦楽四重奏団。オーケストラの演奏活動のほか、リサイタルや学校、病院、介護施設等へ訪問コンサートを行っています。東日本大震災以降、現在まで数多くの避難所や仮設住宅、施設等を訪れ、音楽を通じて絆を結ぶ「復興コンサート」活動を展開。最近の訪問地は、福島市、山元町、気仙沼など。バッハから美空ひばりまで、バロックから平成まで、古今東西の名曲を心をこめた演奏でお届けしています。



 演奏家の想いではなく、来ている人々の想いを代弁できるように、いつも悩みながら選曲しているそうです。バッハやヴィバルデイ、ドボルザークについても一般の方が聞きなれた曲でしたし、いきものがかりの曲や「星に願いを」など口ずさみたくなる選曲でした。美しいアンサンブルの演奏でした。


 


《演奏》仙台オペラ協会
 仙台オペラ協会は毎年秋の本公演と、より気楽に楽しめる「春のインテルメッツォ」を行うほか、地域芸術祭へ参加するなど、東北の音楽・芸術振興に寄与し、市民に愛されるオペラを目指しています。長年の活動対し宮城県芸術選奨や三菱UFJ信託音楽賞奨励賞を受賞しています。今年3月には東日本大震災復興応援公演「双子の星」、9月には創立40周年記念公演「カルメン」を予定。個人としても「復興コンサート」へ数多く参加しています。



 齋藤さんは、オーケストラシリーズのオーディションに合格し、震災を受けた3月11日にヴェルディの「運命の力《神よ、平和を与えたまえ》」をオーケストラと歌う筈でしたが中止を余儀なくされました。
 「神様はいるのだろうか?」自問自答し、自分を恥ずかしく思ったといいます。翌月4月5日「マラソンコンサート」で歌うことが叶い、被災者と時間を共有しエネルギーもらったそうです。このように、思いを込めて熱唱してくれました。「芸術家が震災を受け真っ白な状況から芸術活動を通して震災前より力強く迫力を増し、更により深く慰めたり、より寄り添ったりできると思います。被災者を精神的に支えるよう頑張る」と力強いメッセージがあり、「ふるさと」を全員で合唱。胸が熱くなりました。


 


《メッセージ》加川広重「雪に包まれる被災地から」



 地震、そして津波によって、日常当たり前に感じていた物が崩壊しました。舟が陸に乗り上げる、動かないはずの家屋が流される、室内に流木などの自然物が流れ込み、壊れた天井からは雪が降り積もる。そんな状況を目の当たりにした時に、私はただ呆然とする他なく、何か大きな『精神的な喪失感』のような物を感じました。「雪に包まれる被災地」は、そのような感覚を、あの日に降った雪景色の中に表現した作品であると説明してくれました。


 


《踊り》金津流石関獅子躍「切り返し」



 


《踊り》「白い花」



高橋静香(振付・ダンス)・小川有紀子(ヴァイオリン)による共演。


 


《合唱》市民有志による第九合唱団
 ベートーベン交響曲第九番第4楽章「歓喜の歌」



 ファイナルステージは朗読、加川さんの巨大絵画からのメッセージ、金津流石関獅子躍の供養、ダンスからの祈り、ベートーベン第九合唱の歓喜の歌まで、巨大絵画と舞台芸術が融合した総合芸術的な表現があり、震災から人々が立ち上がる「ひとのちから」を描いたストーリーでした。
 直前イベントは、これまで被災地において文化芸術から心の復興を行ってきた(公財)音楽の力による復興センター・東北の活動を垣間見ることができ、会場は「ひとのちから」「文化芸術の力」の素晴らしさを共感し、生きる元気を戴いた至福の時でありました。感謝!


撮影:佐々木隆二 大峡勝一

イベント概要
イベント名 第3回国連防災会議世界会議 直前イベント『ひとのちから ~祈りを奏でる、祈りをおどる~』
開催期間 2015年02月01日(日)
エリア 東北エリア(宮城県)
開催地 宮城県
会場 せんだいメディアテーク 1階オープンスクエア
料金 無料
主催 仙台市|第3回国連防災世界会議仙台開催実行委員会|(公財)音楽の力による復興センター・東北
協力 (公財)仙台フィルハーモニー管弦楽団|仙台オペラ協会

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