レポート
『森のはこ舟アートプロジェクト』に行ってきました。
「森のはこ舟アートプロジェクト」の現地の運営事務局である「NPO法人 まちづくり喜多方」の事務所を訪れ、現地の状況把握と情報交換を行いました。また、当日開催されていた西会津プログラム『Cooking with texture & sound! 食感と音でつくる森のおいしいレシピ』会場と翌日開催された三島プログラム『三島和楽 土に祈りをこめる』の準備会場にもお邪魔しました。その様子をレポートします。
◆NPO法人 まちづくり喜多方について
喜多方市はNPOによるまちづくりが活発で、その中心的な役割をこの事務所が担っています。 まずは、この団体の活動について説明を伺いました。
2014年度は「価値共創」を目標に以下の14事業を8名のスタッフで実施しています。 「はま・なか・あいづ文化連携プロジェクト」「シェアハウスの運営」「うつくしま太陽光発電の運営」「森のはこ舟アートプロジェクト」「若者育成」「創業支援」「黒岩コミュニティー」「旅人コンサルタント」「コミュニティーカフェの運営」「福島ビエンナーレ」「喜多方・夢・アートプロジェクト」「食べる通信」など・・・。 喜多方市は味噌作り・酒造り、漆器など2次産業が盛んなまちで、蔵のまちとして有名ですが、近年は、高齢化や人口の減少などの課題から、空き家の増加や蔵の運営が困難となるところが増えています。
当初、このNPO法人は、平成17年「環境ストレンクス」という名で、スタートし観光地の自転車タクシー「ペロタクシー」の運営等の観光事業を中心に行っていました。 現在は、上述した街の課題に取り組むべく、コミュニティースペースを目的としたカフェの運営や、他の地域から来る若者を受け入れるべき体制を整えるシェアハウス【アスパラ】の運営(場所の創設)、また大学と共同で自家発電の運営(学びのプログラム)等も行っているとのことでした。 現在の代表理事 蛭川さんは、震災の年に代表に就任し、事業計画の作成時期に震災に遭遇したそうです。
◆森のはこ舟アートプロジェクトについて
これまで、喜多方市・三島町・西会津町と地域ごとで、それぞれアート事業を行っていましたが、今年度より『森のはこ舟アートプロジェクト』というフレームのもと連携がとれるようになったことがメリットとして挙げられます。また、初年度事業であるため、運営スタッフが慣れておらず、マンパワー不足の部分もありましたが、地域の人々との協力により解決し始めているそうで、この関係づくりについては来年も続けていきたいとのことでした。また、事務局の運営費としての資金不足については、どの団体もそうだと思いますが、課題としてあるとのお話でした。
◆森のはこ舟アートプロジェクト 西会津プログラムの視察
『Cooking with texture & sound! 食感と音でつくる森のおいしいレシピ』
西会津町立西会津中学校の家庭科室で、実施しているプロジェクトの模様を拝見しました。 大学かと思うほどの雄大な敷地にある中学校で、隣に小学校が建設中でした。 この中学校は、公民館施設も併用しており、休日はこのようなイベントに貸出が可能とのことでした。 料理研究家の木村正晃さんによる「森の食文化ワークショップ」は、全3回開催。2回目の今回は、参加者もリピーターが多く、作業が早くスムーズに進み、到着した時には食後の後片づけを行っていました。完成品の試食をさせていただきながら、皆さんの様子とプログラムの最後のまとめについて伺いました。
《プログラムまとめについて》
食感は、反対の物を組み合わせると面白い。今回は、シイタケの柔らかさときくらげのコリコリした食感。 食材の色についてもメインの食材に合う色をキャンバスに描くように組み合わせると良い料理になるとのことでした。 (例)シイタケ⇒茶色 茶色に合う色の食材を組み合わせる。
《料理の組立について》
洋食は、料理があり補うドリンクがお酒(ワイン)です。 和食は、酒の肴という言葉があるようにお酒がメインで、つまみが決まります。 甘味はうま味という言葉もあるように、日本では調味料として甘味(うま味)を使うが、洋食では、デザートとして別口になるとの説明でした。
[今回の献立] ソバのニョッキ・ルッコラ・馬刺しの燻製(あっさりしたローストビーフのような味) トマトソース・シイタケと車麩、きくらげ、アサリ仕立てのスープ
参加者はスタッフも入れて30名弱。ご家族で参加されている方も多く見られました。
◆森のはこ舟アートプロジェクト 三島プログラム 準備の視察およびヒアリング
『三島和楽 土に祈りをこめる』
三島町早戸地区には「神々の道」という石碑が並ぶ道があり、昔から信仰の厚い土地柄だったそうです。『三島和楽 土に祈りをこめる』は、作家の古川弓子さんが地元のお婆ちゃんからこの土地で粘土がとれると伺った際に、三島町の遺跡で出土した土偶などは、様々な祈りを込めて作られたものであることから、三島の粘土を使って祈りを込めた、お守りを創るプログラムを考えたそうです。また、「神々の道」には夜泣き地蔵があり、赤ん坊の帽子と交換すると夜泣きが治まるとの風習から、ご自身はお坊ちゃんへの祈りも込めたいとのお話でした。 この日は、ワークショップの前日で準備を行っており、粘土つくりの最後の工程を見せていただきました。
実際に、粘土を触らせて頂いたのですが、手がスベスベになるようなヒンヤリと柔らかく、モチモチとした粘土で、とても気持ちの良い肌触りでした。粘土を作る工程では、8月頃から準備に入り、土を乾燥させて砕いて振るいにかけ、粉にして(写真右2枚)水を混ぜて(写真中央左)粘土を創ったそうで、準備の段階から深い思いがこめられていることが伝わってきました。 また、粘土をコネながらスタッフと古川先生が様々な会話をしていて、その中に沢山のアイディアが生れていて、とても楽しい空間になっていました。
◆三島ワーキンググループへのヒアリング
ワークショップの手応えを聞いてみたところ、ワークショップとしての開催は明日が2回目ですが、プロジェクト自体は、6月下旬に『森のはこ舟アートプロジェクト』がキックオフした時から既に始まっており、地域の課題についてアーティストの方が加わることによって、様々なアイディア等を出し合い、一緒に可能性を見つけ出しているとのことでした。 特に、この三島町でのワークショップは、プログラムの素材から発見し、創り、ワークショップ開催までの過程を大切にしているにしている姿勢が印象的でした。 地域の中で、知恵や経験を持った人が高齢となり生活の知恵が喪失しかけている今、もう一度生活の知恵を循環していくような取組を行っていきたいとの強い思いを伺うことができました。
◆両方のプログラムを視察しての感想
三島・西会津どちらのプログラムも、地域の資源を見直し、昔の生活のように豊かな自然から恵んで頂きながら、継承しようとしている様子がよく伝わってきました。 大切なものを改めて見つめ直す良い機会となりました。 プロジェクトは、今年度始まったばかりで、動き出したという印象ですが、続けることによって、より濃い関係やイメージが浸透していくのではないかと、期待を込めて拝見しました。 この過程を、もっと外に向けて発信できるような体制が出来れば良いと思い、当コンソーシアムとしても、協賛企業とこの企画を繋ぎ合わせた経緯から、これからも協力出来ればと思いました。
イベント名 | 森のはこ舟アートプロジェクト2014 西会津プログラム / 三島プログラム |
---|---|
開催期間 | 2014年10月04日(土)~2014年10月05日(日) |
エリア | 東北エリア(福島県) |
開催地 | 福島県 |
会場 | 【西会津プログラム】西会津中学校 他 / 【三島プログラム】つるのIORI 他 三島町各所 |
料金 | 無料 |
主催 |
福島県|森のはこ舟アートプロジェクト実行委員会 |
共催 |
東京都|東京都文化発信プロジェクト室(公益財団法人東京都歴史文化財団) |
協賛 |
日本たばこ産業株式会社 |
協力 |
文化芸術による復興推進コンソーシアム |